新幹線超のスピードで飛ぶ“軽自動車”!? 「世界最小のジェット機」未だに愛されるワケ
いまだに100機程度が登録済み
本来なら、ビーディーは顧客から集まった予約金を資材の購入や設備投資に充てるべきでしたが、資金はさらなる受注を狙っての広告費などに費やされました。その結果、ビーディー・エアクラフト社は資金不足に陥り倒産してしまいます。
すでに一部キットは発送されていたものの、部品の供給は途中で停止される事態に至りました。その影響で、一時は未完成の「BD-5」が全米各地の格納庫に放置されるほどでした。
加えて、同機はもうひとつの問題を抱えていました。それは、機体形状に由来する劣悪な飛行安定性です。極度に小型化を追求した結果、重心の許容範囲が極めて狭い機体になっていました。そのため、操縦が難しい機体であるといわれています。ゆえに多くの「BD-5」が飛び始めた頃は、事故も多発しました。
こうして見てみると、良く悪くも航空史に名を残す個性的な機種であることは間違いないでしょう。だからか、航空博物館に展示されている機体がいくつかあります。また、今でもおよそ100機が航空機として登録されており、飛行可能な状態で維持されている機体を航空ショーで目にすることも珍しくありません。
裏を返せば、多くの欠点を抱えた機体を完成させ、それをカバーできる操縦技量を維持し、初飛行から半世紀を過ぎてもなお、飛ばし続けるアメリカ人愛好家たちの姿に、並々ならぬ「BD-5」への愛情を感じます。
ちなみに、ここまで小型のため、最近ではアメリカ国防総省が巡航ミサイルをシミュレートするレーダー標的機として使用することも検討したとか。ビーディー「BD-5J」はある意味で、アメリカだからこそ生まれた飛行機だともいえるのかもしれません。
【了】
Writer: 細谷泰正(航空評論家/元AOPA JAPAN理事)
航空評論家、各国の航空行政、航空機研究が専門。日本オーナーパイロット協会(AOPA-JAPAN)元理事
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