今後何十年も? 北陸新幹線「敦賀乗り換え」の不都合 関西→福井の利用者数はかなり微妙な評価も

北陸新幹線の敦賀開業まであと1年。整備効果として、対首都圏には大きな期待が寄せられる一方、対関西などには課題が生まれ、微妙な評価が下されています。最大のネックが「敦賀乗換」で、今後長いあいだ続くことになりそうです。

「対首都圏」はバラ色も「対京阪神&中京圏」は暗い?

 特急「しらさぎ」の今後も懸念材料です。名古屋・米原~金沢間で1時間ごとに運行され、米原駅で東海道新幹線「ひかり」と接続し、福井県と首都圏と結ぶ最短ルートとして賑わいますが、2024年春以降、利用者の多くは北陸新幹線へ移行するのでしょう。名古屋~福井・金沢の移動には米原と敦賀とで乗換が2回必要な時もでてきます。敦賀~東京だと北陸新幹線より現行の米原経由の方が27分早いなどのケースもありますが、利用者数の減少は確実です。運行体系はどうなるのか気になるところです。

 このように京阪神と福井県の移動に限るなら、新幹線敦賀開業効果は限定的です。先の政投銀レポートでも、関西圏から福井県に訪れるビジネス客は敦賀開業後に4.2%増、観光客は0.6%増と横ばいになると慎重な評価をしています。

 一方、石川県では一定の新幹線効果があるようです。大阪~金沢間の所要時間は最速2時間4分、現行より27分短縮するとJRは試算しています。政投銀の2023年レポートでは、敦賀開業後、関西圏から石川県を訪れるビジネス客は21.2%増、観光客は53.5%増と推計しています。着実に利用を増やすためにも連絡特急の利便性向上は重要になります。

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金沢~小松間で建設中の新幹線高架下をゆく特急「サンダーバード」(画像:JR西日本)。

 この敦賀駅での乗換問題、北陸新幹線が京都・大阪まで延伸できれば解決するのですが、それはいつのことでしょうか。

 国は新大阪延伸の時期を23年後の2046年としています。北陸や関西の政財界や自治体は2031年度の開業を要請していますが、諸般の事情で本格着工はまだ先のことです。財源も予算も確保されていません。建設費2.1兆円が倍増するのではとの指摘もあります。今年4月の京都府議会選挙では、建設反対を唱える議員、7年前に検討案から外された舞鶴ルート・米原ルートを支持する議員が当選するなど、地元もまとまっていません。

 このように敦賀駅での新幹線と特急の乗換は、今後10年以上続く可能性が濃厚です。延伸の先行きが見通せない状態で、どのような中長期的ビジョンを描くのか。JR西日本と関係自治体は難しい対応を迫られています。

【了】

【え…もはや別の駅…】 新幹線「敦賀駅」の構造(画像で見る)

Writer:

早稲田大学卒業後、出版社編集部を経てフリーランスジャーナリストとして独立。国内外の自動車や道路、公共交通などを取材し各種メディアや講演で発表。近年は自動運転、MaaS、スモールモビリティに注力。モビリティやまちづくりのリサーチ・コンサルティングを担当する株式会社モビリシティ代表取締役も務める。著書に『パリ流環境社会への挑戦』(鹿島出版会)、『MaaSで地方が変わる』(学芸出版社)など。

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コメント

2件のコメント

  1. 金沢にいると、話し言葉的には関西弁に近い訛りがある印象。

    それを(一時的とはいえかなりの年数)分断するような感じになるんだよねぇ。

    先日乗ったら、金沢→関西(主に京都?)方面を移動する外国人観光客が多かった。

    杞憂するほどでも無いとは思うけど、敦賀乗り換えでこういう旅行が敬遠されたりして。

  2. 23年後とか話にならないわ

    高速道路にバンバン予算を注ぎ込んでるのが原因なんだろうけど、こういうところはどうにかならないのかね

    早く新大阪に繋がないと飛行機にシェア撮られて23年も赤字を垂れ流す未来しか見えない