そして伝説へ「世界一危険なエアレース」半世紀の歴史に幕 累積30人超の死者 なぜいま終わるのか
命知らずたちが火花を散らす名レース
リノ・エア・レースでは、複葉機クラスや短距離離着陸機クラスからジェット・クラスまで計6種のクラスが設定され、競技が行われます。どのクラスも、会場周辺に設置された複数の「パイロン」と呼ばれる標識の周囲を、グルリと回るコースで競技が行われます。高速で旋回しながら飛行するため、各機は急なバンク角を維持しながらパイロン周辺を飛行します。その様子はまさにリノならではの飛行シーンでしょう。
2002年に新設されたジェット・クラスはポーランド製TS-11「イスクラ」やチェコ製L-39「アルバトロス」などの軍用練習機が使用されます。
一方、アンリミテッド・クラスでは、第2次世界大戦中に用いられたノースアメリカンP-51「ムスタング」やグラマンF-8F「ベアキャット」などの戦闘機をベースにした競技機が用いられます。スピードアップ目的のエンジン換装はもちろん、空気抵抗を極限まで減らすためにラジエーターやキャノピーの形状を変更した往年の名機たちが速度を競う姿は、リノでしか見られない光景でしょう。
なぜ今更中止に…?
危険はありながらも名門レースとして50年続いたリノ・エア・レースが、なぜいま終了するのでしょうか。
リノ・タホ空港管理局はこの決定に至った理由について、市街地の拡大と保険料などのコスト上昇を挙げています。たとえば昨年の保険料は、それまでの78万ドル(日本円で約1億140万円)から130万ドル(同1億6900万円)に大きく上昇したのだそう。さらに、同協会では2024年以降のレース会場として、複数の空港所在地とすでに話し合いを始めていると表明しています。
いまや、アメリカ航空文化の象徴的なイベントであるリノ・エア・レースの存続は、航空ファンのみならず多くのアメリカ人たちが見守っていることでしょう。リノにおける最後の開催となる今年のレースは、9月13日から17日までの5日間です。
制度があろうと金が無ければ普及しない