隠れ防衛企業? OKIが保有するナゾの船が公開 “潜水艦の目”で「民間分野拡げたい!」

江浦湾で研究を始めた端緒は旧日本海軍

 OKIコムエコーズのエンジニアリング部トップである宮地 真部長は、ソナーの試験場としての内浦湾の特徴をこう説明します。

「そもそも水槽だと壁が近くて反射してしまい、本当の性能が見えにくい。海の場合は海底と海面以外には壁は無いため非常にやりやすい。また、何と言っても海水と真水の違いがあるため、最終的には実海域で確認したいという声が多い」。

 さらに水中機器の試験を行える海上計測バージは国内でここにしかない点も大きなアドバンテージとのこと。実海域で試験を行うため機器を搭載する専用の船をチャーターする必要がないため、防衛省向けだけでなくJAMSTEC(海洋研究開発機構)や海上技術安全研究所もここでテストを実施しており、すでに1年先まで予約が埋まっているそうです。

 そもそも内浦湾における水中音響機器の研究開発は、旧日本海軍の技術研究所が1937年に沼津に設置した臨海実験所にまで遡ります。海軍と共に潜水艦に搭載するパッシブ・ソナーやアクティブ・ソナーの開発に取り組んでいたOKI(当時は沖電気工業)は第2次世界大戦後、同地域で防衛庁向けの水中音響機器の開発を開始。小型の計測船や「SEATEC II」のような設備を用いて事業を展開してきました。

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OKIコムエコーズの建屋(深水千翔撮影)。

 加藤事業部長は「我々は実に90年近く防衛事業に携わっている。これまで培ってきた水中音響技術を、民間技術に適用することでOKIグループ全体の成長へつなげていきたいと考えている」と説明しました。

 具体的には、
1、海洋モニタリング技術の開発推進と市場参入に向けた機会創出
2、海洋モニタリングの実践・評価と技術・製品の創出
3、海洋モニタリングの社会実装と海洋データプラットホームによる付加価値の提供

 この3段階で海洋事業の展開を図るとしています。

 防衛事業からスピンオフして民間に展開できる技術としては、洋上風力発電の建設場所や海底資源の調査に活用できる海洋・音響プラットホーム、水中音響通信モデム、魚群探知用ソナーなどがあるそう。OKIとしては、水中音響センサーによるセンシング技術、音響機器、システムを揃えたうえで、国策のプロジェクトに参画することを狙っています。

「特機システム事業部の売り上げ規模は現在250億円くらい。これを防衛と民間の売り上げを合わせて400億から500億円程度の規模に伸ばしたい。ただ、我々は国の政策に乗っかろうとしており、予算措置などで難しいものがある。それでも最終的に民間と防衛の売り上げが半々になれば良いと考えている」(加藤部長)

【何やっている場所?】外観からは想像できないOKIバージの中は…(写真)

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