ベトベトしてそう? 陸自74式戦車の「粘着榴弾」が使われなくなったワケ 飛び散るのは弾薬ではなく

粘着榴弾、通称「HEP」って?

 基本的に、現代の戦車が装備する砲弾は、派生形があるとはいえ、これら化学エネルギー弾の対戦車榴弾と運動エネルギー弾の徹甲弾が主流です。なお、ロシアのウクライナ侵攻において話題の「劣化ウラン弾」は運動エネルギー弾に分類されます。

 では最後、いまや見かけなくなってしまった「粘着榴弾」とはいったい何なのでしょうか。

 この弾は、通称HEP(High Explosive Plastic)またはHESH(High Explosive Squash Head)と呼ばれ、対戦車榴弾や徹甲弾と同様に相手の戦車や装甲車などを攻撃する際に使用される砲弾の一種です。分類としては化学エネルギー弾に区分される砲弾で、炸薬にはC4爆破薬やプラスチック爆弾が使用されます。

 名称をそのまま捉えてしまうと、直撃した装甲にへばりついて爆発するかのように受け取れるかもしれませんが、ベトベトと装甲に貼りつく粘着性を持っているワケではありません。実際には、目標に命中した際に着弾と同時に弾頭が潰れ、その後に起爆する様子から「粘着」と呼ばれているのです。

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74式戦車(左手前)と16式機動戦闘車(右奥)。両車とも主砲は105mmライフル砲で、弾薬は共用化されているため、後者もHEP弾を発射することが可能(武若雅哉撮影)。

 粘着榴弾は装甲表面に穴を開けて敵戦車を撃破するのではなく、「ホプキンソン効果」によって相手の乗員にダメージを与えます。この「ホプキンソン効果」とは、鋼板や大岩などに爆薬を密着させた状態で爆破させると、その衝撃波が反対側まで伝播し、剥離(はくり)が起きる現象のことです。

 これを応用し、HEP弾は装甲版の外側に密着した爆薬が破裂すると、それに引っ張られる形で内側の装甲板が剥離します。剥離した装甲片は車内で四方八方に飛び散るため、乗員からすればたまったものではないでしょう。

【見れば違いが明らか】現在主流の「対戦車榴弾」「徹甲弾」と消えつつある「粘着榴弾」を見比べ

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