100年間もレーダーなしだった空軍が導入を決意した理由 「敵は国内にあり」 パラグアイ

パラグアイ下院は国内全ての空域をカバーするレーダーシステムの取得と、それに伴う法整備を決定しました。パラグアイ空軍には建軍から100年間経っても1次レーダーを持っていませんでしたが、とある事情で導入が決まりました。

反社会的勢力に対抗するためのレーダー

 パラグアイ下院は2023年5月4日、国内全ての空域をカバーするレーダーシステムの取得と、それに伴う法整備を決定しました。これらのレーダーを使った監視はパラグアイ空軍が担当するようです。

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離陸準備をしているEMB-312「ツカノ」(画像:パラグアイ空軍)。

 パラグアイ空軍は1912年1月に編成され、100年以上の歴史を持つ空軍ですが、地上から電磁波を照射し、広範囲を監視する近代的な1次レーダーは、今まで所有していませんでした。国土全てをカバーするレーダー網の構築には、最低でも9基の1次レーダーが必要だとされているようです。

 1932年から約3年間続いたボリビアとのチャコ戦争以降、パラグアイの対外関係はかなり安定しており、防衛のために国内の広範囲をカバーするレーダーを設置していませんでした。今回の導入に至った理由としても、対外関係以上に国内事情が強く関係しています。

 それは、犯罪組織による麻薬の密輸や密売です。

 南米では麻薬や違法物の輸送に関して、違法に整備した滑走路などを使い、航空機によって輸送することも珍しくありません。それら、通常のプランではない飛行をする航空機相手には1次レーダーが必要不可欠になります。

 2022年6月7日にパラグアイ下院で行われた、麻薬密売および重大犯罪対策委員会に招かれたアルトゥーロ・ゴンサレス空軍大将は、「パラグアイ領空の管理は、間違いなく大きな課題。広域での探知手段がなく、迎撃手段についても非常に時代遅れであるため、満足に行うことができない」と説明しました。

 また、憲法に定められた防衛任務を空軍は果たせていないとし、レーダーのほかにも、不審機の迎撃手段や攻撃手段に関する法整備、さらに、犯罪者に対抗する迎撃機の候補として、エンブラエル製の軽攻撃機であるA-29「スーパーツカノ」6機の購入も要請しました。現在、パラグアイ空軍では同じくエンブラエル製で元は練習機だったEMB-312「ツカノ」を攻撃機に改造して使っていますが、それでは不十分なようです。

 なお、パラグアイ国内では現在、空軍管轄ではない2基の地上レーダーがあるようですが、1基は故障中で、作動しているものも旧式だそう。この状況を「麻薬輸送機が主導権を握り、防空網は丸裸の状態だ」と批判する議員もいます。
 
【了】

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