部品が不意に落下なら…? 北朝鮮の“衛星”への「破壊措置命令」どこまで対応できるのか
破壊措置命令の内容とは
破壊措置命令については、自衛隊法第82条の3に規定されています。これは先述したように、弾道ミサイルやロケットなど、その落下により人命または財産に対する重大な被害が生じると認められる物体が日本の領域内(領海から陸地側)に落下してくる恐れがある場合に、内閣総理大臣の承認を得て防衛大臣が命令するというものです。
しかし、たとえば事態が急変して、総理大臣からの承認を得る余裕がないという場合も当然想定されます。そこでそうした場合に備え、防衛大臣が作成し内閣総理大臣の承認を得た緊急対処要領に従い、あらかじめ自衛隊の部隊に対して破壊措置命令を下しておくことができます。ちなみに、今回のケースがまさにこれにあたります。
ただし、この破壊措置命令に基づき迎撃を実施できるのは、あくまで対象物が日本の領域内に落下してくる場合に限られるため、たとえばレーダーで航跡を追跡した結果、日本の領域の外側に落下することが見込まれるような場合には、少なくともこの規定を根拠に迎撃することはできません。
北朝鮮が予告した期間は約2週間ですが、実際に自衛隊が迎撃を実施するような事態が発生しないことを心から祈るばかりです。
【了】
Writer: 稲葉義泰(軍事ライター)
軍事ライター。現代兵器動向のほか、軍事・安全保障に関連する国内法・国際法研究も行う。修士号(国際法)を取得し、現在は博士課程に在籍中。小学生の頃は「鉄道好き」、特に「ブルートレイン好き」であったが、その後兵器の魅力にひかれて現在にいたる。著書に『ここまでできる自衛隊 国際法・憲法・自衛隊法ではこうなっている』(秀和システム)など。
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