「無免許で乗れる電動キックボードです」国交省が4社9モデル公表 国のお墨付き制度に課題も
4社9モデルの詳細は?
当該モデルは、確認公表順に次の通りです。
・長谷川工業(大阪市)は脚立のパイオニアメーカー。電動キックボードの世界ブランドYADEAと共同開発した「YADEA KS6 PRO」1モデル
・ホンダのIGNITIONプログラムを経て、分社独立した「ストリーモ」(東京都墨田区)の立ち乗り型電動3輪モビリティ「ストリーモ」1モデル
・原付2種の電動キックボードも手掛ける「SWALLOW」(川崎市)の電動キックボード「ZERO9 Lite」1モデル
・シェアサービス事業者「Luup」(東京都千代田区)の「LUUP」6モデル
長谷川工業、ストリーモとSWALLOWは、主に販売を目的とする車両で、各社ともに自社サイトで予約を受け付けています。その中でもSWALLOWの電動キックボードは、7月1日の道交法改正と同時に出荷を予定しています。ストリーモは一般原付モデルの予約者から特小原付への切り替えを受け付け、秋からの出荷を予定しています。LUUPは主にシェアサービスで活用されるとみられます。
この第三者機関による型式の確認は任意です。型式取得には準備のためのコストと、第三者機関に確認を依頼すると手数料が必要なので、メーカー側からすると、確認を受けないことで安価に車両を提供できる余地が残ります。
そうしたなかで型式の確認に踏み切るメーカーは、確認済みであることが品質の裏付けになります。また確認済みの車両を購入したユーザーは、性能等確認済みシールが貼付されているので、違法な機体かどうかを調べる交通検問に巻き込まれる可能性が格段に低くなります。
原動機付自転車などパーソナルモビリティの規制は、このようにブラックリストの真逆、ホワイトリストを活用することで進んでいます。
型式の確認、難しすぎてコスト高?
ただ、このホワイトリスト方式は、今後に課題も残します。
特小原付の確認のために第三者の性能等確認実施機関として名乗りを上げたのは、結果的に国土交通省OBが専務理事を務める公益財団法人「日本自動車輸送技術協会」ただ1者でした。この協会は軽自動車から大型トラックバスまでの認証試験を手掛ける高度な設備を持つ試験機関です。
特小原付の実施機関を検討したある民間事業者は、「通常の型式取得に近い試験設備が必要で、とても投資に合わない」と、名乗りを上げることを断念しました。せっかく第三者による確認機関を募集しながら、民間の確認機関を育てることにつながりませんでした。
また、事実上独占された試験機関では、試験料が高止まりします。同協会の試験費用は約90万円です。それは利用者の負担に跳ね返ってきます。確認を受けた4社以外の電動キックボードメーカーも7月1日の改正法施行を目指して確認の申請をしていますが、認証不正などの検証も手掛ける日本自動車輸送技術協会者に頼る確認は思うように進みません。
電動キックボードなどの普及は、新しい国内産業を育てる意味でも期待されています。車両規格だけでなく、制度面でもこれまでにない新しいバックアップが必要です。
【了】
Writer: 中島みなみ(記者)
1963年生まれ。愛知県出身。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者を経て独立。行政からみた規制や交通問題を中心に執筆。著書に『実録 衝撃DVD!交通事故の瞬間―生死をわける“一瞬”』など。
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