強力だけど後始末が… 飛行機の「ドラッグシュート」廃れたワケ ただ逆の理由で今も重宝?

むしろドラッグシュートが必要な航空機も

 実用機としては採用例が減ってしまったドラッグシュートですが、展開すると「機体を後ろから引っ張る」という特性から、飛行機の開発試験現場ではまだ現役なのだとか。試験飛行中の緊急事態用に重宝されています。

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ドラッグシュートを展開したF-4EJ改(咲村珠樹撮影)。

 飛行機、特に激しく機動飛行する戦闘機の場合、操縦操作によってはスピン(きりもみ)状態に陥ってしまうことも。このため、開発段階では飛行特性を調べる目的で、どのような操作をするとスピン状態に入ってしまうのか、またどうしたら脱出できるのかを確認すべく、あえて「スピン試験」というものが実施されています。

 パイロットの操縦によって回復可能なスピンであればまだいいのですが、操縦不能になってしまうと墜落につながります。この時、ドラッグシュートを展開すると「機体を後ろに引っ張る力」が発生し、姿勢が変化することによって、スピンから回復させるチャンスが生まれるのです。

 スピン試験のため、特別に装着されるドラッグシュートは「スピンシュート」と呼ばれています。こういった用途を鑑みると、ドラッグシュートは着陸時には使われなくなっても、同じ原理で飛行中の緊急事態から脱出できる装備として、まだまだ役に立ってくれるでしょう。

【了】

【え、こんな巨人機も!?】戦略爆撃機B-52のドラッグシュート装填&展開の様子(写真)

Writer: 咲村珠樹(ライター・カメラマン)

ゲーム誌の編集を経て独立。航空宇宙、鉄道、ミリタリーを中心としつつ、近代建築、民俗学(宮崎民俗学会員)、アニメの分野でも活動する。2019年にシリーズが終了したレッドブル・エアレースでは公式ガイドブックを担当し、競技面をはじめ機体構造の考察など、造詣の深さにおいては日本屈指。

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