ニッポンの「造船」に追い風 見えている“新造船ラッシュ”な世界 でもいまいちシャキッとしないワケ
海運市況の好調で、停滞が続いていた日本の造船業界に明るい兆しが見えています。環状対応の流れもあり、今後ますます新造船の需要が見込まれるなか、日本は“造船大国”を取り戻せるのか、それを左右する課題のひとつが、人手不足です。
見えている「建造量年1億総トン」の世界
日本造船工業会によると、全世界の新造船建造量は年間約5500万総トン(2022年)。既存のディーゼル船を置き換え、GHGの排出量を抑えられるLNG(液化天然ガス)やLPG(液化石油ガス)、水素、アンモニア、メタノールなどを使用する新燃料船へ切り替えるには、2030年以降で年間1億総トンレベルの建造が必要とされています。
同会の金花芳則会長(川崎重工業会長)は「環境規制により各船社は2050年までに現存船を総取り換えする方向に動いており、新造船の建造量は大幅に増加するものと見ている」と話していました。
「この需要拡大をうまく捉えることにより、造船・舶用工業ともに安定した経営が可能になる。船舶のゼロエミッション化というゲームチェンジに応えていくために、舶用工業とはエンジンの開発や新燃料に関する規格化、サプライチェーンの準備などの連携強化が必要になってくる」(金花会長)
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ただ、それでも日本造船が厳しい状況を脱したとは言い切れません。2022年の竣工量は世界3位となる950万総トンですが、2位の韓国は1630万総トン、1位の中国は2570万総トンと水をあけられています。新造船のシェア率は中国が47%、韓国が30%、そして日本が17%と上位3か国で9割以上を占めており、今後も造船大国の地位を守っていくためには、造船所の安定的な操業を確保しつつ、他国に負けない性能とコスト競争力を持つ船を開発していく必要があります。
とはいえ世界的に需要が高まっているLNG船の建造や貨物船とは違う能力が要求される大型客船の建造から日本は事実上撤退しており、それ以外の船種で戦うしかないのが現状です。
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