「南シナ海のさらに先まで!」米空軍の戦略爆撃機B-52史上初めてインドネシアへ展開 その意味は?

F-16戦闘機との連携訓練に含まれた意味は?

 クアラナム国際空港へB-52が展開したというのは、「自由で開かれたインド太平洋」とするため、オーストラリアからさらに “前進配備” が可能になるということです。つまり、哨戒空域までの距離が近くなるので、それだけ哨戒飛行が可能な時間を長くとれるようになり、有事には「出撃→帰還して再武装→出撃」というサイクル、いわゆるターンアラウンドも短くなります。

 また、今回の「ラトマ・コープ・ウエスト23」には在韓米空軍とインドネシア空軍のF-16戦闘機も参加していますが、これは中国空母をにらんだものと見ることができます。

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共同演習に際して、交流を図るアメリカ空軍とインドネシア空軍の両指揮官(画像:アメリカ空軍)。

 というのも、中国海軍の空母が艦隊行動を行う場合、アメリカ海軍のように艦載機による戦闘空中哨戒を実施するのはほぼ間違いないでしょう。その際、対艦攻撃のプラットフォームながら鈍重なB-52が、護衛戦闘機なしで中国艦隊に攻撃を加えることは非常に危険です。そうなると、護衛と露払いの役目を果たす味方の戦闘機が必要になります。

 その役目を今回の「ラトマ・コープ・ウエスト23」で担ったのが、在韓米軍やインドネシア空軍から参加したF-16だったわけです。よって、空戦訓練に加えて、そのための連携訓練なども行われたと推察されます。

 いずれにしても、中国の著しい太平洋進出を受けて、アメリカと周辺諸国が連携した「自由で開かれたインド太平洋」を求める対策も、着実に進化し続けているといえるでしょう。

【了】

【歴史的!】インドネシアの空港に展開した米空軍B-52爆撃機ほか(写真)

Writer: 白石 光(戦史研究家)

東京・御茶ノ水生まれ。陸・海・空すべての兵器や戦史を研究しており『PANZER』、『世界の艦船』、『ミリタリークラシックス』、『歴史群像』など軍事雑誌各誌の定期連載を持つほか著書多数。また各種軍事関連映画の公式プログラムへの執筆も数多く手掛ける。『第二次世界大戦映画DVDコレクション』総監修者。かつて観賞魚雑誌編集長や観賞魚専門学院校長も務め、その方面の著書も多数。

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