世界初の原子力空母「エンタープライズ」未だ解体方法決まらず とんでもないコスト しかも後が続々!?
ネックは8基も搭載されている原子炉
2023年6月30日に海軍が発表した同艦の解体に関する報告書では、数十年使用した原子炉の廃棄が生態系に及ぼす危険性のほか、同艦の解体方法について提案されています。
解体案について複数用意されているようで、そのうち軍が使用するピュージェット・サウンド海軍造船所で解体する案の場合、解体中は同艦にスペースと時間を取られることになる造船所が逼迫し、他の艦船の保守管理に支障が生じる可能性があると、海軍は難色を示しています。
海軍が最も望んでいる案は民間業者に委託して解体する方法です。最も大きな懸念材料は8基搭載されている原子炉の処分で、選択肢としては、民間業者を使って艦船の3分の2まで解体し、推進スペースと原子炉はそのまま残して、最終処分のためにピュージェット・サウンド海軍造船所に送る方法のほか、民間業者が容器まで完全に解体し、原子炉プラントと関連部品を梱包して出荷、認可を受けた施設で処分する方法があるようです。
なお、原子炉を有した艦ということで、周辺環境への影響やスタッフの安全には細心の注意を払う必要があり、どちらの方法を選んだにしても、コストは莫大な額がかかると見込まれています。
どれだけ厳重にやるかによっても費用はまちまちのようですが、アメリカ国内でこれまで報じられている、予想額を参考にすると、おおよそ7億ドル(約970億円)から14億ドル(約2000億円)の額がかかり、解体期間は5~15年になる見込み。ちなみに、現在アメリカ海軍が配備を進めているサン・アントニオ級ドック型輸送揚陸艦の建造費が約14億ドルと言われているので、最大のコストになると、解体するだけで新しい揚陸艦が作れてしまいます。
海軍としては、より多くの作業を民間に委託した方が費用を安く抑えられると見解を述べています。民間に委託された場合はバージニア、テキサス、またはアラバマにある認可された商業解体施設まで曳航される見通し。
なお、2025年頃にはニミッツ級原子力航空母艦の「ニミッツ」が退役の予定です。その後は10年以内に退役する予定のミニッツ級が9隻も控えています。原子炉の数こそ2基と「エンタープライズ」よりは少数ですが、アメリカ海軍と国防総省は、それらの艦が退役するまでに、原子力空母解体の基本的な方針を決めておかなければなりません。
【了】
Writer: 斎藤雅道(ライター/編集者)
ミリタリー、芸能、グルメ、自動車、歴史、映画、テレビ、健康ネタなどなど、女性向けコスメ以外は基本やるなんでも屋ライター。一応、得意分野はホビー、アニメ、ゲームなどのサブカルネタ。
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