軍艦の“着せ替え”実現? 「今日は対潜戦、明日は機雷戦」 変身を可能にするコンテナとは
日本も無関係ではない理由
兵器のみならず、キューブ・システムでは手術用の医療コンテナや水のろ過装置、さらに海面に流出したオイルを回収するための装備などもコンテナ化しており、軍艦だけでなく、海上警察機関の巡視船や消防船など、非軍事組織の任務にもうってつけの存在といえます。
このキューブ・システム、おそらく日本も他人事ではないと筆者(稲葉義泰:軍事ライター)は考えます。たとえば、海上自衛隊の能力強化につながる可能性があるからです。今後、海上自衛隊では従来の護衛艦に加え、主に平時の周辺海域の監視を担う哨戒艦の配備が予定されています。
哨戒艦は、いわば目的特化型の艦艇であり、そのため搭載する装備と乗員数を最小限に抑えることが可能となっています。一方で、艦内には多目的スペースが設けられており、必要に応じて人員や物資の輸送を行うものとみられています。もし、このスペースにキューブ・システムを搭載できれば、たとえば機雷敷設や掃海など、必要に応じて各種能力を付与できるようになります。同様のことは、今後の海上自衛隊の数的主力になりうる多機能護衛艦(FFM)にもあてはまります。
加えて、日本の防衛産業にとっても大きなチャンスとなりえます。キューブ・システムは、国際規格の海運コンテナというサイズの制約を除けば、原則的にどのような装備でも組み込めるというのが特徴のひとつです。そこで、たとえば機雷掃海システムや各種無人装備、さらに医療システムなど、軍事、非軍事を問わず様々な装備を、キューブ・システムとセットで輸出するという道が開けることになるのです。
今後、日本の防衛産業にとって重要なのは、いかに国際的なワクやコンセプトに相乗りして自社の製品を輸出できるかということだと考えられますが、キューブ・システムはまさに、そのための足掛かりのひとつとなりえるでしょう。
【了】
※一部修正しました(8月14日15時30分)。
Writer: 稲葉義泰(軍事ライター)
軍事ライター。現代兵器動向のほか、軍事・安全保障に関連する国内法・国際法研究も行う。修士号(国際法)を取得し、現在は博士課程に在籍中。小学生の頃は「鉄道好き」、特に「ブルートレイン好き」であったが、その後兵器の魅力にひかれて現在にいたる。著書に『ここまでできる自衛隊 国際法・憲法・自衛隊法ではこうなっている』(秀和システム)など。
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