戦車のフロントに“立派なモノ”が… 1度も使われず? 豪州戦車「センチネル」のナゾ

第二次大戦中のオーストラリアでは、戦争拡大での脅威に備え、自国戦車が初めて開発されました。その車体正面に、“ナニ”に使うのかよくわからない突起物が備えられています。

実は収納する“モノ”の影響

 第二次世界大戦中の1940年11月、オーストラリアでは戦争の拡大や、日本が侵攻してくることへの脅威に備え、自国製の試作戦車を完成させていました。後に量産型はセンチネル巡航戦車と呼ばれるようになりますが、同戦車の車体はナニか妙な突起物がついていることでも有名です。

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センチネル巡航戦車、突起物があるのは車体正面(画像:オーストラリア戦争博物館)。

 この戦車はイギリスの巡航戦車をイメージして作られた戦車で、オーストラリアで大戦中に大量生産された唯一の戦車でもあります。開発に当たり参考にした戦車は、イギリス陸軍のクルセーダー巡航戦車で、エンジンや変速機、下部車体、砲塔の基礎などはアメリカM3戦車の影響を受けたという、英米戦車のいいとこ取りの車両となっています。

 戦車砲には対戦車戦を考慮し、オーストラリア軍の標準的な対戦車砲だった「オードナンスQF 2ポンド砲」を採用。後にオードナンス QF 6ポンド砲(口径57mm)」に換装します。1942年の段階でのドイツ戦車と渡りあえるような火力・装甲を持った設計となっており、1942年8月にシドニー近郊のチュローラ戦車製造会社で量産が開始され、1943年6月までに65両が生産されます。

 しかし、欧州や太平洋での戦闘でオーストラリアは、アメリカやイギリスから供与された戦車が大量にあったため、それらの戦車をオーストラリア機甲部隊は優先的に装備し、センチネル巡航戦車はオーストラリア本土に留め置かれる形となり、実戦を戦わずに終戦を迎えます。

 そして、車体正面にある妙な突起物についてですが、これは車載機関銃の銃身が収められているカバーになります。大戦中のほかの戦車の車載機関銃のカバーにくらべ、かなり“硬くてぶっとく”なっているのには理由があります。

 実は、同戦車の車載機関銃にはヴィッカース重機関銃という第一次世界大戦時にも使用された旧式の機関銃が使用されていました。この機関銃は、液体の入ったジャケットで弾丸を発射した銃身を冷やす、いわゆる「水冷式」の機関銃でした。そのため、銃身周りはウォータージャケットに覆われており、そのぶん直径の大きい銃眼が必要だった訳です。

 なお、センチネル巡航戦車は2023年現在、3両しか残っておらずかなり貴重な戦車となっています。

【了】

【ご立派!】これが車体正面にある“ぶっとい”機関銃のカバーです(写真)

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