四角はダメ!? 旅客機の窓が“丸”ばかりな深いワケ かつては「角窓ノスタルジー」も?
過去にはおにぎり型の窓もあった
「コメット」はイギリスで開発された4発ジェットエンジン搭載の旅客機で、1950年代半ばに相次いで墜落事故を起こしました。原因は機体の金属疲労でしたが、調査の結果、当初想定されていた離着陸サイクルの、わずか10分の1で亀裂が入り墜落に至っていたことが判明します。
なぜ、こんなにも早く金属疲労が発生したのか、その要因が四角い窓にありました。機体が上昇、降下を繰り返すうちに、この角の部分に力が集中して負荷が生じ、これが積み重なって胴体が破断、墜落事故に至ったのです。
こうして、ジェット機を中心に機内与圧装置を標準で装備する飛行機のほとんどは、楕円を含む丸窓ばかりになりました。
ただ、高々度飛行をしない航空機、すなわち軽飛行機やヘリコプターなどには、四角い窓のものもあります。また軍用輸送機などで、パラシュートで兵士や物資を投下する際に上空で機体を開閉することもあるような機体は、あえて与圧構造を導入していないものもあります。前出のDC-3はこれらに該当する機体であり、そのような機体では四角い窓を装備していたりします。
なお、ジェット旅客機の黎明期であった1950年代には、フランスの「シュド・カラベル」という、おにぎり型の窓を持つ旅客機もありました。この窓形状は、下方視界の確保と機体強度を両立させるために考え出されたものでしたが、ほとんど普及せずに終わっています。
ちなみに、丸窓がまだ少なく角窓が多かった1950年代には、アメリカ空軍の要人輸送機などでは、あえて丸窓の周りを四角く塗って、角窓を「再現」していた機体もありました。詳細は不明ですが、おそらく年配の将軍たちにとっては、従来の角窓の方が馴染み深かったからではないかともいわれています。
【了】
Writer: 柘植優介(乗りものライター)
子供のころから乗り物全般が好きで、車やバイクはもちろんのこと、鉄道や船、飛行機、はたまたロケットにいたるまですべてを愛す。とうぜんミリタリーも大好き。一時は自転車やランニングシューズにもはまっていた。
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