「ゲーム世代向けの戦車」とは? イスラエルのメルカバ改良版「バラク」 現実と仮想ここまで混濁
ハードは前世代的… なぜソフトをここまで改良?
視界の限定される市街地戦闘では、投入された戦車や装甲車、歩兵や偵察ドローンなどの各ユニットからの情報をネットワーク化し共有することで有利になります。イスラエル陸軍には、C4I(指揮、統制、通信、コンピューター、情報)システムを介して他ユニットとリンクし共同交戦能力が実現できる戦闘管理システム「トーチ」(TORCH)があり、バラクもリンクできます。日本の10式戦車や16式機動戦闘車に搭載されているネットワーク交戦システムと、機能的には同じものではないかと推測されます。
メルカバもドローンの攻撃を早速受けていますが、装備している敵の対戦車砲弾を撃ち落とすアクティブ防御システム(APS)「トロフィー」をドローン対策にも使おうとしています。敵弾を捉えるレーダーを応用してドローンを検知しようというのですが、トロフィーの迎撃弾はドローンには使えないので、撃ち落とすのではなく電波妨害装置に連動させて電子的に無力化するようです。
メルカバはエンジンを前方に配置するなどユニークな構造で、乗員防護にも優れているといわれていますが、構造自体にはメリットはありません。新しい戦車が欲しいものの開発・購入する余裕がなく、メルカバを改修しながら使い続けているという現状です。
バラクも主砲や装甲、エンジンなどハードウェアは20世紀の“枯れた技術”のままですが、ソフトウェアは21世紀のバーチャルゲームのようです。エルビット社の幹部は「スマホやプレイステーションに慣れ親しんだ若い兵士たちが、戦車に乗って戦わなくてはならなくなったときに、親しみやすいものにするため、私たちはこの2年間懸命に取り組みました。」と語っています。しかし、パレスチナの地で起こっていることはバーチャルではありません。
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Writer: 月刊PANZER編集部
1975(昭和50)年に創刊した、40年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。
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