壮大すぎた!? かつての「青梅~青海」首都圏55km地下トンネル構想とは いま再注目のワケ

港のインフラをそのまま地下に延長?

 この調査研究は、現在の一般財団法人エンジニアリング協会内に有識者と官庁、企業からなる委員会が設置され、3年をかけて行われたものです。

 システム構築の目的は、東京港で荷揚げされた海上コンテナを、トレーラーが都市内を通過して郊外に搬出することで、首都圏の道路渋滞や環境の悪化、物流の速達性低下などに影響を及ぼす点を是正することにありました。これは当時、外環道や圏央道といった環状道路の整備が進んでいなかった状況が原因とされていました。

 また、国際海上コンテナが40フィートから45フィートへと大型化するなかで、国内の道路が45フィートに対応できる仕様になっていないことから、それにも早期に対応し、45フィートコンテナの国内流通を普及させるのも目的の一つとして明記されていました。貨物船の大型化に対応しきれない国内港湾の世界的な競争力を維持・向上させる側面もあったのです。

 整備費用は当時の額で2600億円と試算され、費用対効果も良好で、比較的実現性が高いとも記されていましたが、調査後半の2009年度に民主党政権へ交代。調査報告書でも、いわゆる「事業仕分け」で集中投資を行う対象港湾を絞りこむ声明がなされたことが明記されています。構想が実際の事業化に至らなかったのは、そうした背景もあるのかもしれません。

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自動物流道路の参考とされるスイスの地下物流システムのイメージ(国土交通省の審議会資料より)。

 前出したスイスの地下物流システムは、小型の自動運転カートなどが24時間体制で荷物を運ぶシステムにより、陸上交通から貨物の一部を転換させることが目的です。これに対し、「首都圏大深度地下物流トンネル」は、海上コンテナごとまるごと運ぶシステムで、混雑する首都圏を一気にスルーし、そこからコンテナをトレーラーで各地へ運ぼうという発想。陸のインフラというだけでなく、港湾設備の延長線という見方もできるでしょう。この意欲的な構想は、今後再び顧みられることはあるのでしょうか。

【了】

【え、鉄道!?】かなり具体的に計画されていた「首都圏55km地下トンネル」(画像)

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