海自「US-2」存続危うし? 日本が誇る飛行艇“値段高すぎ”問題 輸出も振るわず八方塞がりに
輸出の話どうなったの? 危ぶまれる行く末
前に述べたようにUS-2のような大型で高性能な飛行艇は世界的に見ても少なく、それゆえにインドやインドネシアなどと軍用機型の輸出に関する話し合いが進められました。
そのなかで最も輸出の可能性の高いと言われたインドとは、かなり具体的な話し合いが行なわれたものの、2013(平成25)年5月の協議開始から10年が経過した現在も合意に至っていません。
インドへのUS-2の輸出が進まないのは、その価格の高さや、欧米企業に比べると弱い官民一体のサポート体制、インドが求める大幅な技術移転に日本が応じきれないことなど複合的なものですが、インドは一向に交渉に進まないUS-2の導入に興味を失っていると見られており、インドのオンライン新聞「The Print」は2019年12月にインド海軍高官の話として「US-2売買契約の締結可能性は限りなく低い」と報じています。
新明和工業、さらに言えば日本の持つ飛行艇技術にはアメリカも高い関心を示しています。またヘリコプターでは難しい荒れた海面での捜索救難や離島からの急患輸送など、US-2でなければできない仕事も少なくありません。
スタンド・オフ・ミサイルなどの優先取得は抑止力を構築する上で合理的な判断だと思いますが、そのためにUS-2、さらに言えば大型飛行艇の製造基盤を喪失してしまうとすれば、それは広い意味での防衛力整備にマイナスとなりかねないとも筆者は思います。
【了】
Writer: 竹内 修(軍事ジャーナリスト)
軍事ジャーナリスト。海外の防衛装備展示会やメーカーなどへの取材に基づいた記事を、軍事専門誌のほか一般誌でも執筆。著書は「最先端未来兵器完全ファイル」、「軍用ドローン年鑑」、「全161か国 これが世界の陸軍力だ!」など。
インドは世界最高性能のAG-600を購入するでしょう。