元祖「万能タイプ」 マルチな性能で一世を風靡した戦闘機「サンダーボルト」何がそんなによかった?

ただの戦闘機ではもったいない!

 しかし、ただ戦闘機として制空任務に就かせているだけでは、せっかくの有り余るエンジン出力がもったいないと、翼にハードポイント取り付けて爆弾やロケット弾を吊り下げようと考えも生まれます。

 1944年から投入され始めたP-47Nは、エンジン出力がなんと2800馬力まで向上。航続距離も長いため、欧州の幅広い範囲をイギリスの基地から飛び立ち攻撃することが可能になりました。そしてペイロード(積載量)は近距離ならば当時の日本軍の双発爆撃機並みの1.3t。搭載できる兵装は1000、500、250、100ポンドの各種爆弾やロケット弾と幅広いものでした。

 そもそも搭載されている12.7mm機関銃でも戦車のエンジンを狙えば故障させることが可能だったところ、さらに火力の高い爆弾やロケット弾が追加されたことで、1944年6月のノルマンディー上陸作戦以後は近接航空支援任務の需要が増大し、ドイツ軍から「ヤーボ」として恐れられるようになります。ヤーボとはヤークトボマーの略で、攻撃機の能力を備えた戦闘機のことを指します。

 さらにソ連軍でも同機は運用されましたが、ソ連にはすでに対地攻撃用としてIl-2「シュトルモヴィク」があり、攻撃機としては魅力的に映らなかったのでしょう。そのため、航続距離が長いことが注目され、主に海軍向けに偵察機として運用されることになりました。

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12.7mm機関銃の横から見たP-47「サンダーボルト」(画像:アメリカ空軍)。

 そして同機の最大の強みは、とにかく頑丈であるという点でした。防弾装備がちゃんとしていたことから、対空砲火に多少被弾する程度なら、コックピットに直撃でもしない限り問題なく飛べたといわれています。さらに、エンジン自体も頑丈で、シリンダーがひとつふたつ欠けても短時間ならガラガラ回り続けました。

 戦闘機としての能力では、アメリカ軍のなかでは大戦中最高傑作といわれるP-51「マスタング」には及ばなかったものの、その容量の大きさや頑丈さから様々な任務に駆り出されました。それら全てを完璧にこなした同機はまさに、マルチロール機の先駆けといえるでしょう。なお、大戦終結後もフランス軍が、第一次インドシナ戦争やアルジェリア戦争に使用しており、一部の国では1960年代まで使われました。

【了】

※一部修正しました(11月27日17時40分)。

【実は同じエンジン使ってます!】日本軍航空隊を苦しめたアメリカ海軍機とは(写真)

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コメント

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2件のコメント

  1. 「戦闘機の能力を備えた戦闘機のことを指します」

    上記誤字があります。

  2. 本機のロール性能は極めて劣悪で運動性能にも難があったため
    日本機が性能発揮しやすい低空での交戦が多かったビルマ戦線では意外に苦戦していますね
    マニュアルを見る限り高高度では急降下制限速度もあまり高くないようなので
    本来の主戦場であった高高度でもまっすぐ高速で飛ぶ+上昇以外は
    あまり得意でなかったのかもしれません
    総じてP-40で長期間粘っていた米陸軍航空隊のピンチヒッター的な機体で
    重要な役割を果たしているものの、数字に出ない部分に難があり
    掛け値なしの高性能とは言い難い機体だと思います。