米海軍機が載らない「海兵隊専用空母」なぜできた? 「どうせならずっと乗ってて海兵隊」と思ったかも 合理的なワケ
最新の強襲揚陸艦は現代の「海兵隊専用空母」?
一方、海兵隊飛行隊を空母で運用する目的で、1944年中旬に「海兵空母飛行群」が編成されています。同飛行群の基本編成はグラマンF6F「ヘルキャット」戦闘機またはヴォートF4U「コルセア」戦闘機の昼戦型8機とレーダー搭載の夜戦型8機、それにグラマンTBM/TBF「アベンジャー」雷撃機(攻撃機)12機、総計28機です。こうして生まれた第1海兵空母飛行群が1945年2月「ブロック・アイランド」に配備され、海兵隊専用空母が誕生しました。
以降、3番艦「ギルバート・アイランズ」に第2海兵空母飛行群、5番艦「ケープ・グロスター」に第4海兵空母飛行群、7番艦「ヴェラ・ガルフ」に第3海兵空母飛行群がそれぞれ配備され、最終的に海兵隊専用空母は4隻生まれています。これらのうち、「ブロック・アイランド」「ギルバート・アイランズ」「ケープ・グロスター」の3隻は実戦を経験しましたが、「ヴェラ・ガルフ」はぎりぎり実戦に間に合いませんでした。
実戦に参加した期間こそ短かったですが、これら海兵隊専用空母は、上陸した海兵隊地上部隊への航空支援に加えて、艦隊防空でも夜間迎撃に活躍するなど、優秀な運用実績を残しました。
終戦から約80年経った今日、海兵隊地上部隊とF-35B「ライトニングII」戦闘機やV-22「オスプレイ」、そして各種ヘリコプターを搭載する、アメリカ海軍の全通飛行甲板を備えた強襲揚陸艦が約10隻存在します。それらでの航空機運用はまさに、かつての海兵隊専用空母そのものであることから、最新のアメリカ級などは「進化した子孫」といえるでしょう。
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Writer: 白石 光(戦史研究家)
東京・御茶ノ水生まれ。陸・海・空すべての兵器や戦史を研究しており『PANZER』、『世界の艦船』、『ミリタリークラシックス』、『歴史群像』など軍事雑誌各誌の定期連載を持つほか著書多数。また各種軍事関連映画の公式プログラムへの執筆も数多く手掛ける。『第二次世界大戦映画DVDコレクション』総監修者。かつて観賞魚雑誌編集長や観賞魚専門学院校長も務め、その方面の著書も多数。
米国の陸軍とは、自国を防衛する部隊であり、それぞれの州兵もこれに該当。そして海兵隊とは敵国に上陸して戦う部隊