カムリ、C-HR…なぜみんな日本を去ってしまうのか 海外車種「日本にも!」は望み薄?
アクの強いやつよりコンサバSUVの方が日本で売れる?
さらに、デザインの好みにも国民性が出ます。個人的に世界各国で取材していて思うのは、「可愛い」を好む感性は多数派ではないということです。同じアセアンでも、タイでは「可愛い」がウケるけれど、インドネシアは女性でも「格好いい」を好むように見受けられました。
名前に関しても、各国で感性が異なります。例えば中国語で「250」は、スラングで「バカ」を意味するそうです。そのため車名やグレードに「250」は使いたくないというケースもあります。
つまり、多様で異なる世界各地のニーズに対して、グローバルカーの名の元、ひとつの価値観だけを押し付けるのには、やっぱり無理があるということ。そのため、現在では、どこの自動車メーカーも、販売地域ごとに特化した戦略を実施しています。当たり前ですけれど、日本には日本に向けた商品。アメリカにはアメリカというように、その国ごとの商品作りとラインナップを揃えています。グローバルカーも残っていますが、それ以外の地域専用車がしっかり脇を固めるという構図です。
そうした地域ごとの戦略の例と言えるのが日産「ジューク」です。かつて日本で人気を集めたジュークが2020年デビューの「キックス」と入れ替わるように日本から去っていきました。これは、パーソナル色の強いジュークより、コンサバなキックスの方が日本で売れそうという判断のもとだったといいます。また、日本で2つのSUVを並べるほどの余裕がないというのも理由でしょう。
地域ごとに販売戦略を立てているからこそ、名称もいろいろ変わります。ですから、日本でカムリやC-HRを売らないのは、日本市場むけの戦略ということ。過去の売れ行きが悪かったという理由や、他のクルマを売りたいという考えがあるのでしょう。
それもこれも自動車ビジネスの競争が厳しいからこそ。競争を勝ち抜くために、名前くらいであれば簡単に変えてしまうわけです。そして、売れ行きの鈍くなったモデルをいつまでも売り続けるのは、自動車メーカーにとって、非常に苦しい状況となるのです。
【了】
Writer: 鈴木ケンイチ(モータージャーナリスト)
日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。自動車専門誌やウェブ媒体にて新車レポートやエンジニア・インタビューなどを広く執筆。中国をはじめ、アジア各地のモーターショー取材を数多くこなしている。1966年生まれ。
コメント