ああ懐かしい!「現役最古参のフェリー」はまさに“昭和” 最新船に負けないバブル竣工組
実は鉄道旅にも便利?
また特別に、トラック利用者向けのドライバーズルームも見せて頂きました。2段寝台の2人用個室で、一晩過ごすには十分な設備と感じます。従業員向け食堂やブリッジにもご案内いただきましたが、ここも昭和らしく飾り気のない機能的な空間でした。なお乗客向け食堂はありませんのでご注意ください。
では、いよいよ小倉へ向け移動します。窓口の受付は20時半からで、乗船は21時からですが、船までの連絡通路が長いことに驚きました。出港は21時55分です。
ベテラン船ですが、驚くほど静かな滑り出しで、エンジン音もあまり感じません。筆者が利用した特等Aは、寝台も適度に柔らかく、寝心地はかなり優れています。大きなテレビもあり、この個室に関しては、最新のフェリーの特等にも劣らぬ居住性を備えていると感じました。
瀬戸内海だからか、天候がよかったのか、出港しても船はあまり揺れず、かなり快適に過ごせました。小倉浅野港は早朝5時に到着。フェリーを宿代わりに使うには少し早い時間ですが、7時まで船内に留まることができます。ただし5時以降に一度、乗船口が外されるので、6時半くらいまで滞在することになります。
小倉、あるいは松山へ5時に着けるというのは、この航路の何よりの魅力です。観光の起点としても使いやすいですが、筆者は鉄道も好きなので、例えば通常は松山に宿泊しないと利用できない、JR四国の観光特急「伊予灘ものがたり 大洲編」や、博多への宿泊が必要な、JR九州の在来線最長特急「にちりんシーガイア5号」を利用する際にも便利だと感じました。
現在のところ「フェリーくるしま」を置き換える予定はないとのことで、昭和時代にタイムスリップしたような懐かしい船旅を、もうしばらくは体験できそうです。
【了】
Writer: 安藤昌季(乗りものライター)
ゲーム雑誌でゲームデザインをした経験を活かして、鉄道会社のキャラクター企画に携わるうちに、乗りものや歴史、ミリタリーの記事も書くようになった乗りものライター。著書『日本全国2万3997.8キロ イラストルポ乗り歩き』など、イラスト多めで、一般人にもわかりやすい乗りもの本が持ち味。
コメント