電動キックボード等「特定原付」保険料引き下げか 史上初「原付の下の車種区分」新設を議論 「事故は少ない」
電動キックボードなどを想定した「原付」と「自転車」の中間的な車両区分として「特定小型原付」が創設されてから半年、自賠責保険料にも同区分を新設する議論が進みそうです。原付よりも保険料は安くなると見られ、大量の機体を調達するシェア事業者にとっては追い風になるかもしれません。
特定小型原付の社会実装から6か月「事故被害は少ない」
2024年1月に開催される「自動車損害賠償責任保険審議会」(会長=藤田友敬東京大学大学院教授)で、電動キックボードなどの「特定小型原付」を自賠責保険の車種区分に新設する是非が話し合われることがわかりました。特定小型原付の車種区分は現状では「原動機付自転車」ですが、「特定小型原付」として独自にリスクを評価し、保険料を引き下げることを狙います。
特定小型原付とは、長さ1.9m以下、幅0.6m以下に収まる車格で、定格出力0.6kW以下のモーターを搭載し、最高速度が20km/h以下に抑えられた車両です。電動キックボードは、その代表的な乗りものですが、立ち乗り・座り乗りの方式は問われません。
電動キックボードは道路交通法で原動機付自転車として取り扱われてきましたが、2023年7月、特定原付を規定する道路交通法が施行され、免許不要、ヘルメットなしで運転できるようになっています。
自賠責保険は車両が公道を走るために、所有者が加入しなければならない義務的な保険です。保険金は運転者の被害には支払われず、運転者が及ぼした他の人的被害救済のためだけに支出されるため、加害の程度が軽い車両区分は、保険料が安くなります。
特定小型原付は、車重が軽く、速度が抑えられているため、歩行者など他者に衝突しても、重大事故になりにくいとされます。しかし一方で、車重に関する制限はなく、そもそも特定小型原付として社会実装されてから6か月しか経過していません。
それでも、事故件数が少ないと判断されたことが、保険の車種区分新設への動きにつながったようです。
特定小型原付の区分ができる以前、小型特殊自動車扱い(最高速度15km/h)で試行的にシェア事業者が運用していた時期がありましたが、これも含めても、特定小型原付での死亡事故は長らく東京都内の私有地で起きた飲酒事故1件でした。
この議題を取り扱う自賠責審議会は2024年1月中に一定の結論を得られるよう、2回の開催を予定しています。
【了】
Writer: 中島みなみ(記者)
1963年生まれ。愛知県出身。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者を経て独立。行政からみた規制や交通問題を中心に執筆。著書に『実録 衝撃DVD!交通事故の瞬間―生死をわける“一瞬”』など。
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