能登の被災地にいち早く駆け付け 超ミニ自衛艦「ひうち型」のスゴさとは 「いずも」を引っ張れるって!? 実は海自の名脇役

自衛艦屈指の「バイプレーヤー」

 ほかにも、ひうち型は特筆すべき能力を備えています。そのひとつは、おもに射撃を中心とした訓練の支援です。

 海上自衛隊には無人標的機(ドローン)を操って、艦対空ミサイルなどの実射訓練を支援する「訓練支援艦」があり、こちらがおもに対空射撃の訓練を支援しています。それに対して、ひうち型では水上における射撃の訓練支援が行われます。

 遠隔操縦で動く標的用の無人高速ボートを目標に、護衛艦が艦砲や機関砲を射撃します。水上標的を用いた訓練は、不審船対応訓練などで重要視されており、あえて当てない撃ち方、いわゆる威嚇射撃などをこれでマスターするそうです。

 また、ひうち型は外洋で起きた船舶火災や海上施設火災などに対応できるよう、艦橋最上部に放水銃を備えています。

 なお、ひうち型の後期建造型である「げんかい」と「えんしゅう」の2隻は、それぞれ潜水艦基地がある呉と横須賀に配備されていますが、潜水艦の訓練支援を行うために水中通話装置も装備しているほか、波の荒い外洋航行に対応できるよう、横揺れを抑えるための減揺タンクも備えています。

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太平洋側沖合、真水を満載した艀を引いて航行する、ひうち型多用途支援艦(画像:海上自衛隊)。

 ちなみに、2011(平成23)年3月の東日本大震災における福島第一原発事故では、ひうち型が原子炉冷却用の真水が満載された艀(はしけ)を現地まで運びました。当時の報道によると、積まれていた水は1100tだそうです。これは、大型艦も曳航可能で、さらに自力で離岸と接岸ができる能力をあわせ持っていたからこそ、こなせた任務です。

 いうなれば、タグボートと輸送艦、訓練支援艦、そして消防船の機能を1隻に集約したような存在が、ひうち型です。後方支援がおもな任務であることから、普段あまり注目を浴びることのない艦艇ですが、今回の大地震発生時など、災害派遣の際には頼りになる能力を備えた、縁の下の力持ち的存在といえるでしょう。

【了】

【緊急出港!】輪島まで自衛隊車両を載せてきた「ひうち」ほか(写真)

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Writer: 柘植優介(乗りものライター)

子供のころから乗り物全般が好きで、車やバイクはもちろんのこと、鉄道や船、飛行機、はたまたロケットにいたるまですべてを愛す。とうぜんミリタリーも大好き。一時は自転車やランニングシューズにもはまっていた。

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