F-2戦闘機はなぜ濃紺なの?「サムライブルー」が誕生した秘密 洋上迷彩の歴史とは

対艦任務のために青色を研究し続けた自衛隊

 しかし、青い戦闘機を研究し続けていた国がありました。それが日本です。航空自衛隊では1970年代、戦後初の国産戦闘機であるF-1支援戦闘機を開発しました。このF-1は、洋上を海面すれすれに飛行しながら敵艦艇のレーダーをかいくぐって対艦ミサイルを投下するという対艦攻撃任務に特化した戦闘攻撃機です。

 実際に運用されたF-1は緑と茶の迷彩でしたが、運用開始後も、制式採用には至りませんでしたが、茶色部分を青色に塗り替えたF-1が試験的に運用されるなど、洋上迷彩の研究が続けられていたといわれています。

 その研究が結実したのが、F-2戦闘機の登場です。F-1戦闘機の任務を引き継ぐ形で運用が開始された同機は、機体をダークブルーとブルーの2色に塗り分けられて登場し、世間を驚かせました。

 同機は対艦ミサイルを最大4発搭載可能という、諸外国からみても、特に対艦攻撃任務に特化した多用途戦闘機(マルチロール機)となっています。そのため、日本の海の色に非常に溶け込みやすい塗装がほどこされており、実際に同機が飛行する洋上を上空から見ると、F-15やF-35などほかに航空自衛隊が保有する戦闘機よりもかなり視認が難しいとのことです。海面すれすれを飛行しレーダー網をかいくぐり、敵艦艇に対艦ミサイルを撃ち込むというF-2の任務には適しているカラーリングといえます。

 ただし、この洋上迷彩も完璧とは言えません。F-1と同じく、F-2の主任務は対艦攻撃ではあるものの、空対空戦闘、対地攻撃を行うこともあり、洋上だけが戦場ではないからです。

 また、近年ではレーダーによる索敵範囲も広がり、空中警戒管制機などによりレーダー網の穴も少なくなっていうことから、カラーリングにより目視での発見を避けるよりも、レーダー波吸収材を含んだステルス塗装の方が重要になっているとも言われています。

 しかしそれでも、海に囲まれた日本で、洋上での対艦戦闘を主任務と想定しているF-2にとっては、海の色に溶け込むカラーリングである、「サムライブルー」ともいえるこの青色が非常に重要なのです。

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横田基地のフレンドシップデイに並べられたF-2とアメリカ軍のF-16。戦闘機としては珍しい鮮やかな青が目を引く(画像:アメリカ空軍)

 ちなみに、このF-2のカラーリングを「洋上迷彩」と文中でも表記していますが、この用語はアメリカ海軍でも自衛隊でも使用されておらず、どうやらF-2の部隊配備とおなじころに航空雑誌などの記事の中から生み出された言葉のようです。さらにロシア軍機に関しても青色をベースとした迷彩パターンを使うことがありますが、こちらは空の色との識別困難性を重視して施されているものとなっています。

【了】

【あれ…なんか白っぽくない!?】これが、F-2の「青いプロトタイプ」カラーです(写真)

テーマ特集「【トリビア】なぜその色? 乗りものの色、どんな意味がある?」へ

Writer: 凪破真名(歴史ライター・編集)

なぎはまな。歴史は古代から近現代まで広く深く。2019年現在はフリー編集者として、某雑誌の軍事部門で編集・ライティングの日々。趣味は自衛隊の基地・駐屯地めぐりとアナログゲーム。

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