「戦艦と空母を合体!」日本だけが作った夢の「航空戦艦」本当に中途半端だったのか?
旧式艦4隻まとめて開戦前に航空戦艦化していたら?
とはいえ、航空戦艦自体が役立たずかどうかは、また別の話だと筆者(安藤昌季:乗りものライター)は考えます。伊勢型はカタパルトで艦上爆撃機を射出する構想でした。前述したように、時系列としてあり得ませんが、もし開戦時に伊勢型や扶桑型戦艦が航空戦艦になっていたら、大活躍した可能性は高いのです。
カタパルト射出可能とした、九九式艦上爆撃機を航空戦艦4隻で計88機搭載していたなら、それ以外の空母に零戦や九七式艦上攻撃機を多く搭載できます。艦隊防空や索敵は強化され、敵艦隊への攻撃力も大幅に強化されていたでしょう。
航空戦艦が備える飛行甲板はとても短いため、艦上爆撃機だと、着艦できないとされました。そのため、帰投は陸上基地にするか、もしくは味方空母に着艦・収容してもらう算段で、そこがネックではありましたが、もし前述したとおり開戦時、すでに航空戦艦が4隻あったとすると、それらが大戦前半の珊瑚海海戦やガダルカナル戦に投入されたとしても、空母か味方陸上基地に戻ればいいと割り切れたと思われます。
あと、残念なことに日本軍の艦載機は防御力が弱いので、アメリカの空母機動部隊を攻撃した場合、航空戦艦4隻分88機以上の艦載機が撃墜されています(「珊瑚海海戦」97機損失、「南太平洋海戦」92機損失など)。その損耗度合いを鑑みると、航空戦艦から出撃した艦上爆撃機も損耗するでしょうし、帰る場所が足りないことを心配する必要はなかったものと思います。
なにより、大型クレーンの付いた格納庫には大量の物資を搭載できます。重防御された戦艦で、かつ格納庫を備えている航空戦艦は、ガダルカナル島に上陸した日本陸軍に物資を運ぶのには最適だったのではないでしょうか。
もし、航空戦艦4隻が史実での金剛型戦艦によるガダルカナル島飛行場砲撃の代わりに出撃したなら、前部主砲で飛行場を砲撃しつつ、弾薬食料を降ろすことが可能だったと考えます。それができたなら、史実で「飢島(ガとう)」と呼ばれるような惨状を防げたかもしれません。
【了】
Writer: 安藤昌季(乗りものライター)
ゲーム雑誌でゲームデザインをした経験を活かして、鉄道会社のキャラクター企画に携わるうちに、乗りものや歴史、ミリタリーの記事も書くようになった乗りものライター。著書『日本全国2万3997.8キロ イラストルポ乗り歩き』など、イラスト多めで、一般人にもわかりやすい乗りもの本が持ち味。
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