防衛費倍増=「仕事も倍」川崎重工どう動く 語られた防衛事業のビジョンとは 「三菱とも協力を」
倍の仕事量をこなすため、関係企業の総力を結集へ
また川重は、たいげい型潜水艦に続く次期新型潜水艦の船型開発検討作業も防衛省から受注しており、スタンド・オフ・ミサイル搭載に向けた研究にも参画しています。
新型潜水艦では、隠密行動をする上で必要な高いステルス技術と高い探知技術、そして機動性を向上させる水中航行技術を実現していく方針です。同社が出したコンセプトを見ると、艦橋を後方に寄せていることから、前側にVLSを搭載するスペースを用意するとみられます。
今後は潜水艦建造で培った技術を応用し、防衛分野向けUUV開発や、大気からの二酸化炭素直接回収(DAC)の確立も目指すと説明していました。
新たな事業分野となるのは無人アセット防衛能力の部分で、川重は回転翼と固定翼のそれぞれで無人機の開発を行っています。
回転翼では山岳地帯における輸送を想定して開発された無人VTOL機「K-RACER」をベースに、艦船・島嶼向けの物資輸送無人機や、艦載警戒監視無人機など防衛用途で活用が可能な機体の実現を目指しています。
「『K-RACER』はドローンと異なり、飛行高度に制限がなく、最大積載量は200kgと非常に大きな積載量を持っている。回転翼ならではの特性として、滑走路なしで飛行可能で安定性も高い。防衛用途にも積極的に提案しており、来年春には防衛省で『K-RACER- X2』の実験機を用いて実用試験を行う予定だ」(下川専務)
固定翼については、自社開発の実験機と海外導入機をベースに、哨戒機との連携を行う滞空型偵察無人機や戦闘機と連携して自律飛行戦闘が可能な戦闘支援型無人機を開発しています。
「日本国の防衛力増強に向けたキーとなる技術や商品は我々の手の中にある」と、下川専務は意気込みます。ただ「倍の予算ということは、倍の仕事が来る」とも。
「これをこなすためには、1社だけの力では難しい。三菱重工業などと協力することはもちろん、C-2とP-1のサプライヤーは日本に約2000社あり、その総力を合わせて5年間に来る総量をこなさなきゃいけない」(同)
【了】
Writer: 深水千翔(海事ライター)
1988年生まれ。大学卒業後、防衛専門紙を経て日本海事新聞社の記者として造船所や舶用メーカー、防衛関連の取材を担当。現在はフリーランスの記者として活動中。
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