「秒速3万kmのビーム兵器」をひらりと避ける『ガンダム』世界 そんなこと可能なのか? 現実世界で考えてみた

ニュータイプは撃たれる前に光跡を読む!?

 ただ、実体弾を用いる機関銃や対戦車ロケットでも「弓矢」よりは速いです。ザクマシンガンの初速は秒速200m(100m説も)という資料もあるほどです。

 これを時速に直すと720km/hになります。銃火器としては極めて遅いですが(たとえば90式戦車の120mm砲は秒速1650m程度)、これは有視界戦闘で至近から発砲することが前提であるうえ、MSの手首で12cm砲の凄まじい反動を吸収しつつ連射できるよう、あえて装薬を減らして反動を軽減しているから、初速も遅いのだとか。実弾兵器は初速を上げにくい問題があるからこそ、MSの武器はビームが大半になったのかもしれません。

 MS用バズーカの初速は不明ですが、陸上自衛隊で最近まで使われていた「89mmロケット発射筒M20改4型」、いわゆる対戦車バズーカでは、初速が秒速98~150mとかなり遅いです。もし、MS用バズーカがこの程度の初速であれば、高速で動き、運動性もいいMS相手だと、よほど正確に未来位置へ向けて撃たないと命中しなさそうです。

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見てから避けるのは赤いエースパイロットでも多分無理(イラストレーター:ハムシマ)。

 このように、現代や未来の兵器は「見て避ける」のは困難なので、ガンダムの世界では「ダミー風船」を射出して、機体本体への命中率を下げたり、盾で重要部への直撃だけでも防いだりという防御が取られているのでしょう。

 なお、一番有効な防御方法は、相手の動きから、照準を予測して、発砲する前に回避行動に入ることでしょう。

 エースパイロットである「ランバ・ラル」は、アムロが操縦する「ガンダム」の射撃を受け「正確な射撃だ。それゆえにコンピューターには予測しやすい」と発言しています。センサー有効範囲内での有視界戦闘であれば、塔乗しているMSの側が、敵MSの動きから、射撃方向を予想して、回避を指示するのでしょう。そしてエースパイロットは、コンピューターが指示する前に回避行動に入るため、ほぼ当たらないのだと考えられます。

 劇中で「エルメス」のビット(自律ドローンのような遠隔操作兵器)や、「ガンダム」のビームライフルが、敵機を次々に撃破する場面が描かれていますが、「ニュータイプ」と呼ばれる超人離れした能力で、敵の動きを把握し、センサー有効範囲外からコンピューターに回避指示を出させずに攻撃したから、一方的な撃墜になっていたのだと筆者(安藤昌季:乗りものライター)は推察します。

【了】

【これは現実です】ミサイルもドローンも粉々にした「レーザー兵器」(写真)

Writer: 安藤昌季(乗りものライター)

ゲーム雑誌でゲームデザインをした経験を活かして、鉄道会社のキャラクター企画に携わるうちに、乗りものや歴史、ミリタリーの記事も書くようになった乗りものライター。著書『日本全国2万3997.8キロ イラストルポ乗り歩き』など、イラスト多めで、一般人にもわかりやすい乗りもの本が持ち味。

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