自衛隊なぜ「歩兵」を「普通」と呼ぶ? “軍隊じゃない” 独特の言い換え 実にアッパレな呼称と言えるワケ
「普通科」と名付けのはアッパレかも
広い範囲に展開する必要があることを考えれば、陸上自衛隊のなかで最も割合の多い職種が普通科だというのも理解できるでしょう。
いうなれば地上作戦において主力で最後を締めくくるのは、歩兵であることが「普通」であり、航空機や戦車、火砲にミサイルといった装備は、歩兵を目的地(相手に占拠された土地)に前進させるための補助的存在と見なすことができます。そう捉えると、軍隊における「歩兵」を、自衛隊では「普通」科と言い換えるアイデアを出したのは、地上部隊の作戦行動を熟知した、頭の回る人物であったと推察できます。
歩兵が「普通」であるならば、その前進に際して歩兵が持ち得ない強力な砲火力をもって支援する砲兵は、普通とは違う「特別」な存在といえます。自衛隊における砲兵である「特科」は、歩兵を指す普通科に対する呼び方だと考えれば、納得いくのではないでしょうか。
一見、不思議なように思える陸上自衛隊の「普通科」と「特科」という職種名称は、実際の戦闘における役割に則したものであると理解できます。「兵」の字を使わずとも表現できるよう考え抜いた、先人のアイデアには驚かされます。
【了】
Writer: 咲村珠樹(ライター・カメラマン)
ゲーム誌の編集を経て独立。航空宇宙、鉄道、ミリタリーを中心としつつ、近代建築、民俗学(宮崎民俗学会員)、アニメの分野でも活動する。2019年にシリーズが終了したレッドブル・エアレースでは公式ガイドブックを担当し、競技面をはじめ機体構造の考察など、造詣の深さにおいては日本屈指。
校正原稿残ったままですよ…