だから減便するしかない「バスの2024年問題」市民の足直撃 働き方改革 カギ握る“1時間の差”
バス会社の大敵になる「渋滞」
「退勤から次の出勤まで8時間以上」という従来の規程なら、往路の渋滞に備え余裕を持って仮眠時間を設定しても、上記のパターンにぴたりと当てはまりました。しかしこれが「9時間以上」に拡大されるのでダイヤ改正が必要です。現状でも渋滞時には急きょ新幹線で交替の乗務員を送り込む場面もあるだけに、需要の大きい時間帯からダイヤを少しずらすケースが出てきそうです。
片道200km前後(3~4時間)の路線では、乗務員は1日に1往復を担当します。拘束時間の上限が短縮されるので、復路の渋滞時に上限を超えるリスクが大きくなります。高速バスの中では最も需要が大きく収益性も高いタイプの路線ですが、今後、日曜日の最終便繰り上げなど対応が必要かもしれません。
より難しいのが貸切バスです。路線バスや高速バスは自社で作るダイヤに基づいて運行するのに対し、貸切バスは旅行会社、学校などからバスツアーや修学旅行など多様な仕業を受注します。拘束時間や運転時間は、事前に見積もりをする時点でチェックできます。しかしその時点では、何か月も先の日にどの乗務員が担当するかは決まっていません。誰が担当するかは、個々の乗務員のスキルや前後の日の出退勤時刻、運転時間の長さを考慮して運行管理者が直前に決めるしかありません。
今後、配車管理システム上では車両や乗務員の数に余裕があるから予約を受けても、当日、出退勤のインターバルを確保できず担当できる乗務員がいない、という可能性が大きくなります。特に旅行会社のバスツアーは拘束時間が長いものが多く、貸切バス事業者は受注に消極的になりそうです。
もっとも、立ち寄り地点の数を競うような総花的なツアーは以前から「苦行」「引き回しの刑」と揶揄され、顧客も高齢化しています。24年問題は、変化を先送りしてきた旅行業界、貸切バス業界双方が商品性を考え直す機会だとも言えます。
最近ではテーマを絞り行程にも余裕を持つツアーが増え始めていますが、その流れは加速するでしょう。着地型ツアーと呼ばれる、現地集合の個性的なツアーはなかなか普及が進まなかったのですが、流れを変えるかもしれません。
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