任務は“尖閣諸島の守り”だけじゃない! 最新巡視船「はてるま」引渡しで見た海上保安庁の覚悟 騒がしい日本領海に睨み
領海警備の中枢艦になれる装備も
また、操舵室の後ろ側には、通信装置やヘリコプターからの画像伝送装置などが置かれたOIC(オペレーション・インフォメーション・センター)室が設けられており、ここを使うことで領海警備などの任務に当たる船隊の中枢(指揮統制)船としても機能するようになっています。
甲板上には、高速警備救難艇と複合型ゴムボートを搭載。ヘリコプター甲板は第十一管区の航空基地と連携することを前提にした設備が設けられており、海上保安庁最大のヘリコプターで「あさづき」にも搭載されているH225「スーパーピューマ」をはじめ、飛来した各種ヘリコプターに、電力や航空燃料の補給が可能な設備も備えています。
両舷に設置されたフルカラーの停船命令等表示装置は、日本語や英語、韓国語、ロシア語、中国語が表示可能です。また、不法行為を行っている船に移乗することも想定し、制圧訓練を行える多目的スペースも用意されています。
「はてるま」の平湯輝久船長は引き渡し式で、「尖閣の情勢は予断を許さないと聞いている。我が国の領土領海を守り抜くという方針があるので、警戒業務をしっかりやっていき、また関係機関との緊密な連携を保ちつつ、冷静に毅然として対応を続けて、領海警備に万全を期したい」と意気込みを話していました。
この「はてるま」が属するくにさき型は、2021年度補正予算でも23番船の建造が決まっているほか、2024年度予算では一気に4隻の新造が認められています。いずれも尖閣領海警備体制の強化を目的としていることから、今後も南西諸島への集中配備が進められていきます。
尖閣諸島は南西諸島の端に位置するため、海上保安庁の動きが見えにくいかもしれません。ただ、こういった形で、領土、領海を守ろうと態勢を強化しているのは心強いといえるでしょう。
【了】
Writer: 深水千翔(海事ライター)
1988年生まれ。大学卒業後、防衛専門紙を経て日本海事新聞社の記者として造船所や舶用メーカー、防衛関連の取材を担当。現在はフリーランスの記者として活動中。
コメント