安全性懸念の「ボーイング737」もう限界? 古い基本設計、繰り返された魔改造… “選択肢”は他にもある
ライバル「エアバスA320」に勝つには
737シリーズのもう一つの問題は、ブレーキの制動能力の制約です。
同シリーズの初期設計では機体の総重量は50トン前後でした。しかし、737MAXの最新タイプで、歴史上最も胴体が長い737シリーズである「737-10」では75トンまで増加しています。
さらに初代737は飛行時間の短い短距離路線への投入が想定されていたため、着陸時に加熱したブレーキを飛行中に冷却できるよう、車輪格納時にもタイヤ部分は露出する設計を採用しています。
航空機の着陸滑走距離は離陸滑走距離に比べ短いため、これまで737のブレーキ容量は問題になることはありませんでした。しかし、胴体延長にともない機体の重量が増してくると無視できない状態になります。
ライバルの欧州エアバス社は、基本設計が新しい「A320」を主力製品としてきました。実はA320とボーイング737型シリーズを比較すると、着陸距離に大きな差が出る場合があるのです。
エアバスA320では着陸後、滑走路の途中で誘導路に入るところ、ボーイング737は滑走路の先まで行ってから誘導路に入ることがあります。混雑空港においては少しでも速く滑走路から出ることが求められるため、前者の方がメリットは大きいです。これは2モデルの制動までの距離に差があることを示しています。
737シリーズは「もっとも売れたボーイング旅客機」であり、根強い需要を持っているものの、制約も多く存在します。
このような制約を克服する一つの方法として、737型後継機として、この半世紀で同社が開発した単通路機である「757」の新シリーズを開発することも、有効な手段ではないかと筆者は考えています。
757は国内での導入はなかったものの、737より長距離飛行を見込んだ「727」の後継機種として生産され、アメリカではメジャーな旅客機モデルのひとつです。しかし2024年現在、ストレッチ(胴体延長)を繰り返した737最新シリーズは、もはや727と同じサイズにまで達しています。
基本設計の余裕は安全面でも有利です。直径の大きな新型エンジンやウイングレット、「フライバイワイヤ(パイロットの操舵指示を電気信号で伝える仕組み)」などの最新技術を盛り込むことで、経済性・安全性の両面で優れた新型機になるのではと、筆者は想像しています。
【了】
Writer: 細谷泰正(航空評論家/元AOPA JAPAN理事)
航空評論家、各国の航空行政、航空機研究が専門。日本オーナーパイロット協会(AOPA-JAPAN)元理事
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