航続距離も武装も異次元!? 海保の歴史を変えたスーパー巡視船「しきしま」引退 ムダになりかけた元「核を護る船」の30年
海保の歴史に名を刻んだ「しきしま」
ただ、「使える」大型巡視船として常に第一線で用いられてきた「しきしま」は、国土交通省の評価書で「老朽化が極めて進行し、業務執行のみならず、船内生活もままならない状況」と明言されるほどでした。
そのため、海上保安庁は延命改修を行うのではなく新造船で代替することを決定。こうして「しきしま」は解役に向けたカウントダウンに入っていくことになります。
しかし、その優れたヘリコプターの運用能力などは有用だったようで、2023年5月19日から21日にかけ、広島市で開催された主要7か国首脳会議、通称「G7広島サミット」でも警備のために広島湾内にその姿を見せていたほか、2024年1月1日に発生した能登半島地震でも搭載機による物資輸送を行っています。
間もなく32年にわたった船齢を全うし解役を迎える巡視船「しきしま」ですが、その名前は、れいめい型4番船として2024年3月13日に三菱重工業下関造船所で進水した2代目「しきしま」に受け継がれることになりました。
ちなみに、引き継がれたのは船名だけではありません。船首側面に描き込まれる「PLH-31」という船番号も新船に継承されています。その点でも異例な「しきしま」。その名は海上保安庁の歴史にしっかり刻まれることでしょう。
【了】
Writer: 深水千翔(海事ライター)
1988年生まれ。大学卒業後、防衛専門紙を経て日本海事新聞社の記者として造船所や舶用メーカー、防衛関連の取材を担当。現在はフリーランスの記者として活動中。
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