人類初の動力飛行は「ライト兄弟」ではない? 真の“世界初”は誰? 功績を認めたくない人々vsコロッと寝返った“権威”

一部ではホワイトヘッドを推す動きも

 さて、ホワイトヘッドの偉業に話を戻しましょう。

 初めての空を飛んだ飛行機がどの機体なのかの論争が起きているとき、ホワイトヘッドがどうしていたのかは、記録には残されていません。現在よりも情報網が発達していなかった当時、固定翼機を諦めてヘリコプターの研究に没頭していたホワイトヘッドの耳に、論争は届かなかったのかもしれません。なお、ホワイトヘッドは1927年に亡くなっています。

 彼の行った動力飛行は新聞にも掲載され、彼の死後もその飛行を目撃した人の話が出ることとなり、1936年に「ポピュラー・アヴィエーション」誌へ記事が掲載されて以降、様々な航空雑誌などで論議されてきました。

 彼が開発したモーターなどから、「ホワイトヘッドが世界初なのでは」と声を上げる研究者もいましたが、スミソニアン協会はその大部分を「都市伝説の域を出ない」として認めていません。ライト兄弟の飛行は、数多く写真が残されているのに対し、ホワイトヘッドの飛行はリトグラフしか残されていないことも疑わしい部分のひとつとされています。

 しかし1963年、コネチカット州の家の屋根裏部屋で、1910年のホワイトヘッドと地上に駐機している複葉機が写った写真が見つかると、州が調査に乗り出します。結果、同州は1968年にホワイトヘッドを「コネチカット航空の父」とし、ホワイトヘッドこそ人類初の動力飛行を達成した人物だと評しました。

 ほかにも、『ジェーン世界の航空機年鑑』の出版100周年記念版では、その功績を認め、「世界初の有人動力飛行の成功者はライト兄弟ではなくグスターヴ・ホワイトヘッドである」と記しています。ライト兄弟の功績はやはり、一部で懐疑的に見られているのです。

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ホワイトヘッドと1901年製とされる単葉機「パインストリート」(画像:パブリックドメイン)

 実はホワイトヘッド以外にも、クレマン・アデル、リチャード・パースといった人物が、ライト兄弟より以前に動力飛行機の初飛行を行ったのではないかと言われています。しかし、資料など、証明する情報が乏しいため、現状では、覆るには至っていません。

【了】

【元「世界初」機?】これが、失敗していたことがバレたスミソニアンの飛行機です(写真)

Writer: 凪破真名(歴史ライター・編集)

なぎはまな。歴史は古代から近現代まで広く深く。2019年現在はフリー編集者として、某雑誌の軍事部門で編集・ライティングの日々。趣味は自衛隊の基地・駐屯地めぐりとアナログゲーム。

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