危険な「第4種踏切」なぜ無くならない? 事故が起きてから重い腰を上げる行政

そこが踏切だと認識してもらうために…

 こうした実態からは、「10年で踏切を取り替えていたら、費用がかさんで経営がおぼつかなくなる」という中小私鉄の懐事情が透けて見えます。とはいえ鉄道会社にとっても踏切事故は運行を著しく乱すので、本来ならば踏切整備には手を抜けません。しかし、ない袖は振れないのが実情です。同じような理由で、地方私鉄やローカル線、ゆっくり走る路面電車で第4種踏切は存置されてきました。

 今回の上信電鉄の事故をきっかけに安全第一の意識はいっそう高まり、第4種踏切を第1種へ切り替えようとする動きや、踏切そのものを廃止する動きも出てきました。秩父鉄道が4月、廃止に向け道路管理者らとの協議を加速すると発表したほか、第4種踏切を抱える沿線の市町村では、第1種踏切への切り替えを促す意味も含めて、整備費用を負担・補助することを表明しています。

 JR西日本管内では、第4種踏切に手押し式のゲートを設置する取り組みを進めています。ただし踏切ゲートは、列車が近接してもそれを何らかの仕組みで知らせてくれる設備ではありません。

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「踏切ゲート-Lite」。ポールにバーが付いた形状で、普段は遮断している。横断者はバーを持ち上げ、通行後は自動的に元の位置に戻る(画像:JR西日本)。

 第4種踏切の何が問題かというと、そこが踏切と認識されず、線路を自由に横断できるように見えてしまう視覚的な部分だといえるでしょう。フルスペックの第1種踏切導入はハードルが高くとも、踏切ゲートは歩行者に、線路へ意識を向けさせる心理的な効果を生みます。

 安全対策と費用、踏切をめぐる問題はこれかも模索が続きそうです。

【了】

えぇ… 首都圏で9本の線路を跨いだ長~~い第4種踏切(写真)

Writer: 小川裕夫(フリーランスライター・カメラマン)

フリーランスライター・カメラマン。1977年、静岡市生まれ。行政誌編集者を経てフリーに。官邸で実施される首相会見には、唯一のフリーランスカメラマンとしても参加。著書『踏切天国』(秀和システム)、『渋沢栄一と鉄道』(天夢人)、『東京王』(ぶんか社)、『私鉄特急の謎』(イースト新書Q)など。

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