災難!「人気鉄道イベント」に2年連続ヘリ緊急出動 “撮り鉄”遭難にSL集団避難 トラブルも“棚ぼた”もダイナミックすぎる海外
第二次大戦時の不発弾で機関車も大避難
実は1年前の2023年4月14日から16日まで開催された第15回の会合も、ヘリコプターが緊急出動して中止という、踏んだり蹴ったりな目に遭っていました。イベント初日、会場となる鉄道博物館の敷地のすぐ脇で、たまたま建設工事をしていた作業員が、第二次世界大戦中に米軍が残していった250kgの不発弾を掘り当ててしまったのです。
翌日にイベント2日目が控えていたものの、不発弾処理のため、博物館の一帯は全面封鎖に。万が一の大惨事に備えて警察車両、消防車、救急車、赤十字などが大量に投入され、上空からはヘリコプターが見守る厳重な警戒態勢が敷かれたのです。
幸いにも不発弾には起爆装置が1個しか付いていなかったため、処理作業自体は開始からものの30分で完了したのですが、全面封鎖が解除されたのは15時近くになってしまいました。
博物館の周囲1km圏内の住民1万5000人には朝9時までに家を出て避難するようにと事前に通達され、郊外の避難所までの送迎バスなども用意されましたが、高齢者や体が不自由な人も多く、避難完了までに5時間近くもかかってしまったのです(中部ドイツ放送およびザクセン新聞による)。
鉄道イベントも、もちろんその間は中止です。蒸気機関車が牽引する朝一番の特別列車も、無情にも運休となりました。ただ、鉄道ファンにとって、予定されていたイベントの中止が悪かったかどうかは微妙なところ。というのも、博物館に収蔵されているお宝の機関車や旅客車両なども近隣住民とともに避難し、ドレスデン中央駅の構内に勢ぞろいしたのです。高速鉄道ICEや近郊列車などと並んで駅構内にレアな機関車がズラリと並び、ファンサービスのために構内を行ったり来たりしてみせたものですから、テレビなどのメディアや単なる野次馬までもが押しかける大騒動となりました。
2年連続で不運な事故に巻き込まれましたが、予定通り開催できた恒例の人気企画には、蒸気機関車2編成がドイツ鉄道の本線を抜きつ抜かれつ並行走行するイベントや、「夜の写真パレード(Nachtfotoparade)」というものがあります。後者は、スポットライトで照らし上げた転車台の上で、鉄道博物館のお宝の蒸気機関車やディーゼル機関車などを次々に回転し、鉄道ファンたちが垂涎(すいぜん)しながら、ひたすらその写真を撮り続ける会です。
「2度あることは3度ある」とならずに、来年は無事に開催できることを祈るばかりです。
【了】
Writer: 赤川薫(アーティスト・鉄道ジャーナリスト)
アーティストとして米CNN、英The Guardian、独Deutsche Welle、英BBC Radioなどで紹介・掲載される一方、鉄道ジャーナリストとして日本のみならず英国の鉄道雑誌にも執筆。欧州各国、特に英国の鉄道界に広い人脈を持つ。慶応義塾大学文学部卒業後、ロンドン大学SOAS修士号。
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