世界初の「水素燃料旅客船」ついに旅客輸送に投入! “EV船じゃムリだね”水素ならではの強みとは
EV船ついてこれるか? このスピード!
ジャパンハイドロが水素混焼エンジンの普及を進める背景として、バッテリーや燃料電池に比べて高出力化が容易という点があげられます。青沼社長は「本船の最高速力は23ノット(約43km/h)。スピードを出せるのが、この船の一番の特長だ」と胸を張ります。
「これだけスピード出せる代替燃料の船は多分、本船だけ。バッテリーだとここまでのスピードは出せない。スピードを出そうとすると後ろから前まで全てバッテリーという船になってしまう」(同)
ただ、環境問題への対応として海運の将来的なゼロエミッション化が叫ばれているものの、水素の供給体制が整っていないという現状があります。実際、「ハイドロびんご」で使われている水素は、九州の福岡市内で充填したものです。
こうした点から導入のハードルを低くするため従来型の燃料の利用も想定しつつ、既存の船舶と使い勝手が変わらないものを、という考えから、水素と軽油を燃料として使用できる混焼エンジンを選択することになりました。
「この船の一番良いところは水素がなくても動かせるということ。水素供給の方法について、最初の段階にはヒットすると思っている」(青沼社長)
「ハイドロびんご」では、燃料となる水素の貯蔵タンクは可搬式で船体後部に装備。軽油と別のラインを通じてエンジンへ水素を供給して混焼する仕様となっているため、岸壁に水素充填の設備が必要なく、水素を供給するための輸送や積載も容易な構造となっています。
青沼社長は「水素で120km走り、その後残った軽油で780km走る。実際、運用する時にEV(電気推進)船だとどうしても1日に何度も充電しないといけない。本船はだいたい丸1日分、水素混焼運転を行えるだけの水素を貯蔵できる」と話していました。
ジャパンハイドロでは「ハイドロびんご」に続く水素燃料船として、水素混焼エンジンを搭載したタグボートを計画しています。さらに日本財団の協力を得て2026年度を目標に水素専焼エンジンを搭載したゼロエミッション船としてレストラン船の開発・実証運転を行うほか、水素を供給するインフラ整備(水素ステーション)も行う予定です。
【了】
Writer: 深水千翔(海事ライター)
1988年生まれ。大学卒業後、防衛専門紙を経て日本海事新聞社の記者として造船所や舶用メーカー、防衛関連の取材を担当。現在はフリーランスの記者として活動中。
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