毎月1万機必要 ウクライナの軍事ドローンは「驚きのローテク」で運ばれていた! スーツケースに詰めて30時間の列車旅
時差1時間なのに時差ボケに悩まされる
戦地へのドローン供給の際、地味に悩まされるのが、時差ボケだと言います。スムレニー氏が住んでいるドイツとウクライナの時差は1時間しかありません。それでも、ウクライナに着くと、いつも、まるで日本など極東に行った時と同じくらいの時差ボケに襲われるそうです。
ベルリンからウクライナへは様々なルートがあるものの、どのルートをとっても、丸一日から30時間ほどかかります。その中で最短で行かれるのがポーランドの最東部、プシェミシル市経由です。2023年3月に岸田首相がウクライナのゼレンスキー大統領と首脳会談をするためにキーウを電撃訪問した時も、プシェミシル市経由でした。
このルートを利用することが多いというスムレニー氏ですが、朝10時52分にベルリン中央駅を出発し、プシェミシルで列車を乗り換え、プシェミシルを出発するのは深夜23時26分。そこからさらに9時間半かけて夜通し列車の旅は続くわけですが、その間に国境検問、税関の検閲、麻薬探査犬の捜査など、様々な事情で繰り返し叩き起こされ、眠れないままキーウに降り立つと言います。
ほかのルートでも、あらゆる理由で結局いつも眠れずに、キーウに着くと時差ボケの睡魔と戦いながらの生活になるそうです。キーウの駅に着いた途端、寝不足でボンヤリしている頭上を飛ぶミサイルを見たこともあったと回想します。
今後、民間資本の軍事ドローンが戦争で果たす役割の重要性は増すばかりだと思われますが、「盟友の元にドローンを届ける」という、このような篤(あつ)い意志に支えられた超ローテクのマンパワーで届けられていました。
【了】
Writer: 赤川薫(アーティスト・鉄道ジャーナリスト)
アーティストとして米CNN、英The Guardian、独Deutsche Welle、英BBC Radioなどで紹介・掲載される一方、鉄道ジャーナリストとして日本のみならず英国の鉄道雑誌にも執筆。欧州各国、特に英国の鉄道界に広い人脈を持つ。慶応義塾大学文学部卒業後、ロンドン大学SOAS修士号。
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