「夜の総火演」昼とどう違う? もう「花火大会」じゃない 発光厳禁の真っ暗闇で行われた演習とは

いきなり号令、閃光、ドン!!

 今年の総火演の特徴は、広報展示を目的にしたいわゆるエンタメのような構成ではなく、教育演習であることを前面に押し出したもので、それは夜間演習でも同様でした。そのため、従来のようにどんどん照明弾を打ち上げ、曳光弾を撃ちまくって闇夜を照らし出す「花火大会」にはならず、見学者からすれば寂しい気もしました。空中で発光し落下傘でゆっくり降下してくる多数の照明弾は幻想的で見どころですが、実戦的ではありません。

 教育演習であることを強調するように、演習項目は敵機械化大隊の侵攻を複数の防御線で食い止めつつ反撃するという、実戦的な総合戦闘射撃訓練に準じた内容でした。そのため会場の大型モニターを使って、状況設定の説明はきっちりとなされました。逆に、例年行われていた暗視装置の紹介はほとんどありませんでした。

 構成は、まず前方の警戒部隊が敵の前進を察知し、警戒部隊の後退と収容を援護するために、無照明下で火力を発揮。次に斥候などから得た情報をもとに、照明弾も使用しつつ敵の攻撃準備を妨害、もしくは突撃を破砕する不意急襲火力を発揮、最後に逆襲という流れでした。

 不意急襲というように、いつどこから現れるか分からないホップアップ標的を射撃するので、「大きな音がします。ご注意ください」というような進行を紹介する丁寧なアナウンスもなく、真っ暗闇の中、無線の音声だけが流れ、いきなり射撃号令が出て閃光が見えたと思いきやドン、という具合です。号令をきちんと聞いていないと、どこで何が起こっているのかまるで分からなくなるでしょう。

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冬季の北海道大演習場を小さな管制灯火のみで走行する90式戦車(月刊PANZER編集部撮影)。

 夜間演習の所要時間は約50分で、使用された弾薬量は約20.6tでした。暗闇だと天候の変化にも気付きません。いつの間にか天気は回復して雲は吹き散らされ、富士山は星空を背景に薄っすらと稜線を表し、ふと天頂を見上げると北斗七星がくっきり見えていました。

【了】

【写真】暗闇が一瞬明るく! 夜間演習における照明弾の威力

Writer: 月刊PANZER編集部

1975(昭和50)年に創刊した、40年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。

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