交通系ICカードより「タッチ決済」ゴリ押しでいいの? 「外国人にも便利」は本当か 海外の“現実”
予想外に少ない外国人観光客のタッチ決済
要因のひとつは、ロンドンを訪れる外国人観光客がオイスターカードを引き続き利用し、タッチ決済をそれほど使っていないことです。
「訪日外国人のお客様などに対して、これまでより利便性の向上が図れることを目的として導入を検討しております」―-タッチ決済の実証実験を開始する東京メトロは取材に対して、こう説明しました。
ところが、ロンドン交通局によると、過去1年間にロンドン交通局のタッチ決済で行われた支払いのうち、海外のクレジットカードでの支払いはたったの1割だそうです。2023年はヒースロー空港の利用客数が8000万人弱と、同空港史上3番目に多い記録を叩き出していることから、コロナ禍の名残で海外からの旅行客がそもそも少ない、というわけではなさそうです。
世界都市ロンドンにもかかわらず、海外のクレジットカードでのタッチ決済は思いのほか、少ないのです。理由として、3つの仮説が考えられます。
まずは、タッチ決済の周知が進んでいないため、外国人旅行客が自国のクレジットカードやデビットカードで直接支払えると知らない可能性があります。
2つ目は、タッチ決済で海外のカードを使用した場合、決済当日の為替レートが適用されるうえに海外手数料を取られるため、レートの良い日を選んで交通系ICカードにチャージした方が得な場合がありそうです。ちなみにロンドンではクレジットカードでもデビットカードでもオイスターカードにチャージできます。
そして、最後に、防犯上の理由から、慣れない旅行先の駅の雑踏の中で、クレジットカードやデビットカードを取り出してタッチ決済することに不安を感じる旅行客も少なくないのではないでしょうか。
日本でもタッチ決済を本格導入した場合、訪日外国人の利用はどの程度見込めるのか、すでに導入されている江ノ島電鉄などでの統計が待たれます。
さらに、日本では交通系ICカードからタッチ決済への移行がなかなか進みそうにない特殊な事情がありそうです。
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