アメリカ屈指の巨大造船所「韓国メーカー」が買収へ 米海軍長官がほくそ笑んでいるワケ
アメリカの内航船シェア50%を占める大手造船所を、このたび韓国企業が買収すると発表しました。ただ、この造船所は特殊な法律で守られていた面もあるようです。韓国企業が買収して立ち直るのでしょうか。
最後に修繕したのは「ジョン・F・ケネディ」
韓国大手財閥のハンファグループがアメリカでの造船事業に進出します。同社グループのハンファ・システムズとハンファ・オーシャン(旧大宇造船海洋)は2024年6月21日、アメリカ造船大手のフィリー造船所を1億ドル(日本円で約160億円)で買収すると発表しました。
フィリー造船所は、「ジョーンズ法」の呼び名で知られる1920年商船法に基づいて、アメリカ国内航路に就役する大型商船の約50%を建造しているほか、海軍艦艇の修繕も手掛ける同国屈指の造船所です。「米国内の海上輸送を行う船舶は、国内造船所で建造され、かつ所有者と乗員は米国民に限定する」方針を定めた同法を後ろ盾に操業を続けてきました。
一方のハンファは、オーストラリアの造船企業オースタルにも買収を提案しており、艦艇事業のさらなる拡大を図ろうとしています。
現在のフィリー造船所は、かつてアメリカ海軍の新造ヤードだった旧フィラデルフィア海軍造船所を前身とし、その跡地に1997年、アメリカ政府と民間企業などが協力して設立しました。旧フィラデルフィア海軍造船所はアイオワ級戦艦「ニュージャージー」「ウィスコンシン」など大型艦を建造した実績があり、全盛期は約4万人もの従業員を抱えていました。
しかし、1970年11月に揚陸指揮艦「ブルーリッジ」を引き渡して以降、新造艦の建造は止まり、冷戦の終結に伴って1991年に操業停止が決定。キティーホーク級航空母艦「ジョン・F・ケネディ」のオーバーホールを最後に1996年9月、閉鎖されました。
新造・修繕設備の一部はフィリー造船所に引き継がれ、東側のエリアはフィラデルフィア産業開発公社(PIDC)が主導してインフラを整備し民間投資を呼び込み、オフィスや研究開発施設、製造拠点、店舗、住宅などが進出してきています。一方でアメリカ海軍が使用するエリアや建物も残っており、そこでは退役した艦艇の保管などが行われています。
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