異形のエンジン=実はスペック最強 !?「クセ強ルックス飛行機」その強みは? でもなぜか流行らず

ロシアに破壊された「世界最大の飛行機」ことAn-225「ムリヤ」を生み出したアントノフ社は、ほかにも変わった機体を生み出しています。その筆頭が、ユニークなエンジンを採用し飛んだ輸送機「An-70」です。どのようなものだったのでしょうか。

ジェット機とプロペラ機のいいとこ取り?

 2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻で破壊された、「世界最大の飛行機」ことAn-225「ムリヤ」。この機体を生み出したのが、旧ソビエト連邦時代に設立され、現在ウクライナに本拠を構える航空機メーカー、アントノフ社です。しかし同社はこのほかにも変わった機体を開発しています。その代表格と言えるのが「An-70」ですが、これはどんな飛行機だったのでしょうか。

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An-70(画像:アントノフ社)。

 An-70の最大の特徴は、エンジンのユニークさにあります。同機に搭載されているのは、同軸でつながった二重のプロペラ「二重反転プロペラ」を持つ「プロップ・ファン・エンジン」というもので、プロペラ機としては一般的なターボプロップエンジンを発展させたものです。

 プロペラ機は燃費が良く、離着陸に要する滑走路が短く済む一方で低速なのに対し、ジェット機は高速ながら燃費効率に弱みを持つほか、長い滑走路が必要になります。

 プロップ・ファン・エンジンは、この2枚のプロペラそれぞれが左右逆方向に回転するようになっており、エンジン回転方向の反対側に働く力「反トルク」をそれぞれが打ち消します。このことでプロペラ機らしい燃費効率の良さや短距離離着陸性能を持ちつつも、ターボプロップより遥かに高速で飛ぶことができるのが最大のメリットです。

 An-70は600から800mの未舗装滑走路でも離着陸できるほか、低燃費でありながら優れた高速性も実現しており、あらゆる天候や気象条件で使用できると紹介されています。実際、アントノフ社が生産する従来型のターボプロップ機「An-12」の巡航速度は公称570km/hといわれるなか、An-70は700~750km/hの巡航速度を誇りました。

 プロップ・ファン・エンジンを持つ飛行機はAn-70のほかにも製造されましたが、スペック上は優れているにも関わらず、プロペラ機、ジェット機ほど一般的にはなっていません。これは後者2種類のエンジンが長い歴史のなかで高い信頼性やノウハウを獲得していることや、プロップ・ファン・エンジン機は独特の騒音を発するため、これがネックになったことなどが理由とされています。An-70も現在のところ、製造数はわずか1機です。

 とはいえ、近年いわゆる航空分野で二酸化炭素を排出しない「ゼロエミッション」に向けた動きが活発化しているなかで、この一つに、水素燃料や電池を動力としてプロップ・ファンを採用する研究も進められています。

 また、An-70自体もウクライナ空軍からの発注を受けているため、将来的には量産化される可能性も大いに考えられるでしょう。

【了】

【写真】エンジン変! これが「ウクライナのクセ強輸送機」全貌です

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