イギリス「次期戦闘機やめます」報道は過剰反応か? 波乱だらけの国際開発 “最悪のシナリオ”を回避するには

イギリスの政権交代により、日英伊による次期戦闘機の共同開発計画「GCAP」が方針転換する可能性が出てきました。実際どのような影響が考えられるのでしょうか。

ドイツが抜けて頓挫の可能性もあったユーロファイター

 ユーロファイターの開発は企画段階でのフランスの離脱のほか、技術的問題や東西冷戦の終結などから当初の計画(1980年代)よりも遅くなっただけでなく、東西ドイツの統一により旧東ドイツのインフラ整備に多額の資金の投入を余儀なくされたドイツが1992年に計画からの脱退を表明したことから、一時は開発計画の頓挫が取りざたされていました。

 その後、検討された代替案がタイフーンの開発を続行するより割高になることが判明したことから、ドイツは脱退を取り下げ、当初の計画よりも就役次期は遅れたものの無事就役しています。

 ユーロファイターほど極端な例は多くありませんが、政権交代により国防方針の見直しが計られ、ヨーロッパ諸国が国際共同プロジェクトの再検討を行った事例は存在します。このためイギリスの新政権がGCAPを見直しの対象として、イギリスメディアが中止と騒ぎ立てるのも、不思議な話ではありません。

 このGCAP見直しの報道は、日本国内でも大きく取り上げられており、大手新聞社及びNHKなどのテレビメディアでも「次世代戦闘機」「見直し」さらに「開発中止」といった文字が見出しに踊っています。しかしスターマー首相と7月16日に電話会談を行なった岸田文雄総理大臣は、GCAPで日英両国が協力していくことを再確認していますし、林芳正官房長官も7月22日の記者会見で、GCAPの見直しを否定していることなどから、計画見直しという事態には至らないと筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)は思います。

 国内報道でこのような状況になっていることに関しては、日本が他国と兵器共同開発をした経験が少ないことが影響している可能性も考えられます。

 日本はアメリカとF-2戦闘機などの防衛装備品の共同開発を行った経験はありますが、ヨーロッパ諸国との防衛装備品の共同開発プロジェクトに参加した経験はありません。それ故に日本のメディアは、ポラード閣外相の発言やイギリスメディアの報道に対して、やや過剰に反応しているのではないかとは思います。

 とは言うものの、イギリス国内で政権交代以前からGCAPの見直し議論がくすぶっていたのも事実です。その最大の理由は、いくらになるのかわからない巨額の開発費と製造費にあります。

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ユーロファイター「タイフーン」の共同開発機体だった(画像:イギリス国防省)。

 イギリスは2021年9月にアメリカ、オーストラリアと軍事同盟「AUKUS」を結成しています。AUKUSは新原子力潜水艦の開発を柱に据えていますが、巨額の開発費を必要とするAUKUSの原子力潜水艦開発とGCAPの両方を推進することは不可能なのではないかとの見方が、GCAP見直し議論の論拠となっています。

【計画は進行中!】これが、新たに公開されたGCAPのコンセプトモデルです(写真)

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