『ガンダム』はなぜ“空母”が少ない? MSばかり戦うなら「たくさん艦載すりゃいいじゃん」そうでもないワケ
アニメ『機動戦士ガンダム』には、MSを搭載する「ホワイトベース」「ムサイ」などの宇宙艦艇が描かれます。しかしMSの戦闘が勝敗を決める世界観なのに、純粋なMS空母はほぼ登場せず、砲撃力の高い艦艇ばかりです。なぜでしょうか。
史実の航空戦艦は…
人型機動兵器モビルスーツ(MS)が活躍する、アニメ『機動戦士ガンダム』。作中でMSの攻撃力は非常に高く、開戦当初にルウム戦役でシャアが「戦艦5隻を撃沈した」とされています。
そうであるなら、宇宙艦艇には可能な限りのMSを搭載した方が、戦力が向上するようにも思えます。つまり「MS空母」ということです。
しかし、設定によって「宇宙空母」と称される「ホワイトベース」は、諸説あるものの全長262m、重量3万2000tの大型艦ですが、MS搭載数は最大でも15機。射程72kmの88cm主砲塔や連装メガ粒子砲、多数のミサイルランチャーなどの重武装を搭載しており、空母というよりは「航空戦艦」のようです。実際、劇中で「新型戦艦」と呼ばれることもありますから、航空戦艦のような存在なのでしょう。
史実において、戦艦の砲撃力と空母の航空機運用能力を兼ね備えた航空戦艦は、旧日本海軍の伊勢型航空戦艦のみです。伊勢型戦艦を改装して主砲塔を減らし、艦尾に艦載機格納庫とエレベーター、カタパルトを設置して、艦載機22機を射出できるようにしました。
航空戦艦は1923(大正12)年、イギリス・ヴィッカース社の軍艦設計部長で金剛型巡洋戦艦を手掛けたサーストン技師が、基準排水量3万5000トン、40.6cm主砲3門、速力30ノット(約55.6km/h)のプランを提唱したのが始まりです。空母と戦艦を兼ねた万能軍艦案は、空母の始まりから存在したのです。
しかし、実用化されなかったのは、空母としても戦艦としても中途半端だったから。実際、伊勢型航空戦艦は、戦艦としては最低限の砲撃力で、空母としては搭載機数が少なく、かつ着艦できない問題がありました。
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