既にギリギリ状態?陸自の「攻撃ヘリ」事情 無人機が来るまでの中継ぎ機体も頼りない!?

無人機配備までの中継ぎも心配…

 その後AH-1Sの後継機としては、AH-64Dの能力向上型AH-64E「ガーディアン」と、アメリカ海兵隊などが運用しているAH-1Z「ヴァイパー」に絞られますが、前者は価格の高さから、後者は新造機の製造が終了してしまった事から導入には至りませんでした。

 そして2022年12月16日に閣議決定された防衛力整備計画で、AH-1SとAH-64Dを早期に退役させ、地上部隊の支援と偵察を行う「多用途無人機」に置き換える方針が示されました。

 陸上自衛隊には攻撃用UAVの運用経験が無く、戦力化には一定の時間を要することから、防衛力整備計画はAH-1SとAH-64Dの退役から多用途/攻撃用UAVの戦力化までの継投策として、既存のヘリコプターの武装化により、必要最低限な機能を保持するとしています。
 
 対戦車や対地での運用を想定した攻撃ヘリコプターを早期退役させ、武装化した汎用ヘリコプターで置き換えるという手法は、ドイツ陸軍も採用しています。ドイツ陸軍はエアバス・ヘリコプターズのH145Mに、同社が開発した汎用ヘリコプター用武装キット「H Force」を搭載しました。

 H Forceの武装の内容は、機関銃を内蔵したガンポッド、無誘導ロケット弾、レーザー誘導ロケット弾と平凡ですが、タレスが開発した、夜間暗視装置との互換性を備えたヘルメット装着型照準装置「スコーピオン」により、夜間戦闘能力や精密攻撃能力を備えます。

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H Force」と組み合わせるヘルメット内蔵型照準装置「スコーピオン」(竹内修撮影)。

 防衛省・陸上自衛隊の考える「既存ヘリの武装化」がどのようなものになるのかはまだ不明ですが、UH-2汎用ヘリコプターに簡易な照準装置とガンポッドやロケットランチャーを組み合わせたものになる可能性が高く、その場合、戦闘力は専用の戦闘(対戦車)ヘリコプターはもちろん、ドイツ陸軍のH145Mよりも劣ってしまうでしょう。

 陸上自衛隊の地上部隊の支援は航空自衛隊の戦闘機などでもできますが、陸上自衛隊が自前の航空支援能力を持つ意味は大きく、速やかな多用途無人機の導入が望まれます。

【了】

【見た目普通のヘリ?】これが、武装キットを搭載したH145Mです(写真)

Writer: 竹内 修(軍事ジャーナリスト)

軍事ジャーナリスト。海外の防衛装備展示会やメーカーなどへの取材に基づいた記事を、軍事専門誌のほか一般誌でも執筆。著書は「最先端未来兵器完全ファイル」、「軍用ドローン年鑑」、「全161か国 これが世界の陸軍力だ!」など。

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