6年で本数“53倍”!? 高速バスで爆速成長した「新たな幹線」とは きっかけは新名神 運用効率が良すぎる!?

10分間で「8台発車」も!?

 圧巻なのは「2限」の通学時です。神姫バス三ノ宮バスターミナル9時50分発のKSC直行「関学エクスプレス」は、毎日4台体制です。その5分前にはアウトレット経由三田駅行きが、10分後にはKSC経由便とアウトレット行きが続々と発車します。

 他方、大阪発は停留所の処理能力の限界から発車を分散させています。「関学エクスプレス」は梅田発が9時45分と50分に2台ずつ、新大阪発が9時40分と45分に各1台(いずれも休講日を除く)。それを追いかけるように50分にはアウトレット行きが発車します。

 元は神姫バス三田営業所が担当していた両路線ですが、今や大阪線は阪神バスを共同運行に引き込んだほか、神姫バスの社(やしろ)営業所(兵庫県加東市)や津山営業所(岡山県)の車両が「中国ハイウェイバス」として大阪に到着後、三田へ「出稼ぎ」するなど、総力戦の様相です。

老いるニュータウン 急成長バスの“次なる課題”とは

 飛ぶ鳥を落とす勢いで成長した両路線ですが、課題もみえてきました。まず、少子化の進展です。

 今年の18歳の人口は、「団塊ジュニア」である筆者(1972年生まれ)の世代の約半分しかおらず、名門・関学と言えど学生集めに手を抜くわけにはいきません。緑に溢れ、伝統ある西宮のキャンパスのスペイン風建築を再現したKSCは魅力的なキャンパスですが、都心の大学に比べると利便性が課題です。

 首都圏でも、郊外のキャンパスへ都心から学生用のバスを運行し始めたら「偏差値ランキング」が上昇したという話もあります。神姫バス営業課長の佐藤 匡さんは「大学と二人三脚でKSCの魅力向上に努めたい」と話します。

 また北摂三田ニュータウンは、最初の入居から既に40年が経過し、「オールドタウン化」も課題です。働き盛りにマイホームを作った世代が定年退職し、通勤需要は減少します。その子供は都心近くに移り住む例も多く、街全体の人口も減っていきます。北摂三田ニュータウンは、あえて時間をかけて整備を進めたため高齢化は緩やかですが、それでも徐々に市場は縮小します。

Large 240730 shinki 03

拡大画像

新大阪駅北口で発車を待つ関西学院大学KSC行き(成定竜一撮影)。

 それを補うために必要なのが、FIT(海外からの個人自由旅行者)を含む観光需要の喚起です。

 2024年4月、神戸(三宮)~アウトレット線に有馬温泉経由の系統が新設されました。オーバーツーリズムが話題となる京都や大阪に対し、意外にも兵庫県、神戸市にはインバウンドの受け入れ余地が残っています。「神戸、有馬温泉、神戸三田プレミアム・アウトレット、さらに姫路への回遊性向上が目下の課題」(前述の佐藤さん)です。

 地元の需要を知り抜く神姫バスが柔軟な系統設定とダイヤ改正を繰り返した結果、北摂三田ニュータウンは、神戸と大阪の両都心(三宮、梅田)、新幹線駅(新神戸、新大阪)、空港(神戸空港、伊丹空港)へ乗り換えなしでアクセスできる便利な住宅地となりました。今後は、県内に広く事業を展開する同社の強みを活かし、大学やアウトレットはもちろん各地の観光産業との連携を深めることで、観光周遊回廊(コリドー)を県内に構築することが期待されます。

【了】

【驚愕!】6年で“恐るべき増え方” 三田-新大阪線の時刻表ビフォーアフター(画像)

Writer: 成定竜一(高速バスマーケティング研究所代表)

1972年兵庫県生まれ。早大商卒。楽天バスサービス取締役などを経て2011年、高速バスマーケティング研究所設立。全国のバス会社にコンサルティングを実施。国土交通省「バス事業のあり方検討会」委員など歴任。新聞、テレビなどでコメント多数。

最新記事

コメント

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleのプライバシーポリシー利用規約が適用されます。