現存唯一の鉄道車両で「髪切って、ひげ剃ってきた!」長野の山中に残る“動く床屋さん”とは

「理髪車」初体験の意外な感想

 理髪体験の当日は、東京から自動車で高速と一般道を4時間以上かけて移動し、延々と続く山道を走ってようやく到着しました。ただ、赤沢自然休養林の駐車場がゴールではありません。そこでクルマを降りたら、今度は徒歩で森林鉄道記念館まで上がっていきます。なお、目的の「理髪車」は、普段保管されている屋根付きの場所から少し離れた森林鉄道乗場の横のレール上で、赤い車体を見せて待機していました。

 早速、この日の理髪を担当する「BBつばめ」の渡辺さんに挨拶をして、カットをお願いします。店は一見すると小型の車体でしたが、中はそれなりにスペースがあり、清潔な車内には散髪用の椅子や鏡、さらにはタオル蒸し器など、当時の物がキレイに保存されていました。聞けば蛍光灯も運用当時の規格だそうで、その保存へのこだわりに驚きます。また、台車から上は木製なので腐食や雨漏りが心配されましたが、それも定期的な補修でクリアしていました。

Large 240807 rihatsusya 02

拡大画像

「理髪車」で調髪や洗髪、顔剃りと全ての工程を終えて、さっぱりした顔で専用椅子に座る筆者と理髪担当の渡辺和博氏(岡 耕士郎撮影)。

 専用椅子は、見た目こそ古色蒼然としていましたが、50年以上前の物とは思えない座り心地で、顔を剃る時も足を伸ばし、リラックスした姿勢をガタつくことなく保持してくれました。さらに驚いたのは、入口の左手にある当時の洗髪台が稼働していた点。これは上の箱状容器にお湯を入れて蛇口をスイングさせてお湯を出す方式で、最近になって保健所の許可が下りて再使用が可能になったそうです。

 実際に髪を切って洗髪、顔剃りと一通りやってもらった感想は、意外なほどスムーズで普段の理髪店と変わらない印象でした。しかし、車両を含め各種設備は50年以上前に作られたものであることを考慮すると、それを保存・補修する森林鉄道の職員の方々や、細心の注意を払いながら使用する渡辺さんのご苦労もあったのだろうと、体験してわかりました。

【車内は一見の価値あり!】現役で使われる半世紀以上前の理髪用具の数々(写真で見る)

最新記事

コメント

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleのプライバシーポリシー利用規約が適用されます。