ロシア「異形の戦車」から機関砲が消えた? ガン・ミサイル両方載せから“一本化” ドローン対策に選んだのは

機関砲の代わりに装備されたのは?

 ゲパルトの後継としてドイツのラインメタル・エア・ディフェンスAGが開発している「スカレンジャー30」は、30mmAHEAD弾を使うことを前提に作られ、小型ドローン迎撃に有効であることが認められており、ドイツ軍が導入を決めています。一方ロシアはこの種の砲弾開発に投資してきませんでした。

「パンツィリ-SMD-E」で機関砲の代わりに装備された小型ミサイルはTKB-1055と呼ばれています。公表されている能力は射程距離500~7000m、射高は15~5000mとされ、既存の57E6対空ミサイルが射程距離1200~20000m、射高15~15000mですので、一応近距離と中距離をカバーできます。装備はモジュラー化されており、57E6を外せばTKB-1055を最大48発搭載できるそうです。ロステックは、TKB-1055は効果的で安価だと紹介しています。

 また、レーダーも改良されて小型ドローンを5~7kmの範囲で検出でき、122mmロケット弾などの大きなターゲットなら最大10kmの範囲で検出できます。さらに、レーダー断面積(RCS)が1.0平方メートル2のターゲットを最大45kmの範囲で検出する能力があるとされます。

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「パンツィリ-SMD-E」の説明パンフレット。機関砲を廃止し小型ミサイルのみ装備したイラストが描かれている(画像:KBP機械製造設計局)。

 AHEAD弾と小型ミサイルTKB-1055のコスパ比較は分かりませんが、ロシアのメーカーはAHEAD弾のような砲弾を開発するのではなく、「ガン・ミサイル両方載せ」を止めて小型ミサイルを提案しているのです。ドローン対策にどんな方法が有効なのか、試行錯誤は続きます。

【了】

機関砲、ない! Army-2024での「パンツィリ-SMD-E」(写真)

Writer: 月刊PANZER編集部

1975(昭和50)年に創刊した、40年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。

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