戦艦は金かかる…「なら駆逐艦に巨砲載せれば!」政治に翻弄された“異形の軍艦” 新技術使ったのに大失敗なぜ!?

艦に大きな砲を搭載すれば火力は上がりますが、そのぶん反動も強く転覆する危険も高まります。その問題を解決するのでは、と第二次世界大戦前に期待されていたのが無反動砲と駆逐艦の組み合わせでした。

しかし、スターリンの粛清の嵐が

 しかし、ここで大きな問題が発生しました。ソ連の最高指導者だったヨシフ・スターリンによる「大粛清」が起きたのです。これは共産党および軍の浄化という名の下、反スターリン派と目される人物を次々と処刑したもので、1937年に開発者クルチェフスキーも逮捕投獄されてしまいます。

 クルチェフスキーの罪状はなんと「劣悪な兵器システムを設計した罪」という無茶苦茶なものでした。確かに、研究費がかかり過ぎていたことは当時から言われていたそうですが、真相は不明です。

 これにより、同年11月には彼に死刑判決が下り、すぐさま処刑。1939年1月には彼が開発した無反動砲の全てが破壊され、研究によって構築された各種技術もほかの研究者に継承されることなく消えてしまいます。その結果、ソ連は第二次世界大戦において無反動砲の技術でドイツに大きく立ち遅れることになりました。

 当然「エンゲルス」からも305mm無反動砲は降ろされ、そのまま日の目を見ることはありませんでした。巨砲を降ろされた「エンゲルス」は、普通の駆逐艦として運用され、第二次世界大戦、いわゆる独ソ戦の序盤、1941年8月24日に触雷により沈没しています。

Large 20240921 01
クルチェフスキーの死後、ソ連で開発されたSPG-9無反動砲(画像:ルーマニア陸軍)。

 ちなみにクルチェフスキーは、口径500mmの無反動砲を艦艇に搭載する案も考えていたようで、彼が粛清されていなければ、無反動砲、そして軍艦の歴史は大きく変わっていたかもしれません。

【了】

※一部修正しました(9月22日14時00分)。

【ああ、ご立派…】これが駆逐艦に屹立する“巨砲”です(写真)

Writer:

なぎはまな。歴史は古代から近現代まで広く深く。2019年現在はフリー編集者として、某雑誌の軍事部門で編集・ライティングの日々。趣味は自衛隊の基地・駐屯地めぐりとアナログゲーム。

最新記事

コメント

記事ランキング

  1. 家族が「SSSS航空券」を引き当ててしまった…! 乗る前から“異変” 保安検査員も「Oh…」 誰でも起こり得る“緊迫の一部始終”
  2. ロシア軍の爆撃機が「真っ逆さまに墜落」 地上に激突する瞬間を捉えた映像が公開 “巨大な黒煙”が立ち上る
  3. “まるで高速”な無料バイパス「全線4車線化」へ変貌開始! 一部の上下線分離まもなく 対面通行を解消 国道8号
  4. 飛行中の「日の丸特別機」に粋なサプライズ! 天皇皇后両陛下を“最新ステルス戦闘機”がお出迎え
  5. 「危なすぎる!」阪神高速“中の人”がブチギレ!? “衝撃動画”とともに呼びかける「ドライバーが守るべき3つのこと」とは
  1. 家族が「SSSS航空券」を引き当ててしまった…! 乗る前から“異変” 保安検査員も「Oh…」 誰でも起こり得る“緊迫の一部始終”
  2. あと1年足らずで「現金でバス乗れなくなります」 全路線“完全キャッシュレス化”疑問に応えるサイト開設 京王バス
  3. ETCの手前で「ガシャン!」高速入口に吊るされた「黄色い鎖」の正体は? 傷つく覚悟で“あえてぶつける”超アナログな理由
  4. ロシア軍の爆撃機が「真っ逆さまに墜落」 地上に激突する瞬間を捉えた映像が公開 “巨大な黒煙”が立ち上る
  5. 「“再有料化”でいいから4車線化して」→普通車280円になって1年 利用者負担で勝ち取った“効果”あきらかに 八木山バイパス