ブーム伸ばす謎のF-15「イーグル」!? 米空軍が進める戦闘機の汎用化 “中国との戦争”見据えてか
戦闘機まで空中給油機化、なぜ?
新しいバディポッドは既存の600ガロン(約2300リットル)外部増槽を原型とし、プラットフォームに依存しないことが条件となっています。F-15Eの後は、他の戦闘機やビジネスジェットの空中給油機化も想定されています。
アメリカ空軍はKC-135、KC-10、KC-46などの大型空中給油機を500機以上保有しており、これは世界の空中給油機の過半数以上に相当します。現在でも十分な数を保有していると言えますが、なぜ、さらにF-15Eやその他の飛行機に空中給油機としての能力を与えようとしているのでしょうか。
それは前線で空中給油できる能力を維持するためです。昨今、アメリカ政府は従来の対テロ戦争ではなく、国家間戦争(対中国)へ軸足を置こうとしています。
対テロ戦争では多くの場合、相手がテロリストや武装集団など対空能力を持たない相手であったため、空中給油機は事実上どこへでも展開することができました。しかし強力な対空能力を持つ敵国家との戦闘においては、旅客機をベースとした空中給油機は脆弱な目標であり、より後方で空中給油せざるを得なくなると考えられます。
F-15Eであれば高度な自己防御システムを装備し、自衛戦闘も可能です。また、他のミッションを担う戦闘機に随伴できる高い機動性を備えており、既存の空中給油機では難しい最前線近くでの空中給油も可能となります。
さらに、戦闘能力を持った無人戦闘航空システムが実用化された後は、これを24時間以上継続して戦闘空域に留まらせるといった使用法も考えられます。
現在、航空自衛隊では空中給油機を大幅に増やしています。その一方で既存のF-15の多用途機化を進めていることから、前出の新しいフライングブーム式のバディポッドを調達する可能性も、十分あると言えるかもしれません。
【了】
Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)
1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。
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